トック氏が送る
ホラー映画レビュー




ネクロマンティック

(NEKROMANTIK1and2 1987・1991)

 

ネクロマンティック1 完全版 ネクロマンティック2 完全版



「性器をアップで見せる方がよっぽど変態よ」

−ネクロマンティック2−



ホラー映画レビュー、第6回は死霊のはらわた!アメリカにスプラッターブームを巻き起こした怪作!
にしようと思ったんだけどPCトラブッて画像文章全部消えてやる気が失せたのでネクロマンティック。
朝起きて身体がだるくてやる気が起こらない、そんなローテンション時にもってこいの作品。

読んで字のごとく「ネクロマンティック」は死体愛好がテーマ。
屍姦映画は他に「モルグ」「キスト」「ナイトウォッチ」があるので、その手の人は要チェックね。
キストはサントラがイイ。屍姦映画のサントラとは思えないほど爽やかで優しいメロディ。
サントラは雰囲気!って方は買ってみては。

監督はドイツホラーの皇帝、ユルグ・ブットゲライト。
ブットゲライトの他作品は「死の王」「シュラム」。それから「キラーコンドーム」の製作にも関わっています。
その中でも特に「死の王」は危にゃいね。あぶにゃい。
多くのホラー映画は死は怖いものだって前提になりたっているんだけど、「死の王」はその逆。

「死ぬって怖いことじゃないんだよ。優しいんだよ。ほら、こんなに優しい」

危ないメッセージを自殺シーン交えて延々と垂れ流してる。もう電波だだもれ状態だ。

これ観た瞬間、俺は心の底から思い知った。ブットゲライトは本気だと。本気でやってると。

ところでドイツはお国柄が真面目でその分閉塞してるせいか、撮られるホラーがどれもこれもぶっ飛んでる。
「トランス/愛の晩餐」「ドイツチェーンソー大量虐殺」「テロ2000年集中治療室」などなど、差別とファックとバカのオンパレード。
移民とバカップルは全員細切れになって死ね、という。なんつーか、色々ムカツいてんのかな、ドイツ人。

笑いかマジか判別しづらい一線を越えてしまったホラー、ドイツではやはりそれなりの処分を受けてしまう。

例えばイッテンバッハ監督の「バーニングムーン」

残虐描写バンザイ!なゴア映画なんだけど、規制にひっかかって、監督しょっぴかれちゃった。
で取調室で絶叫。「芸術じゃあ!表現の自由なんじゃあ!」と。ドイツでホラーを撮ろうと思ったら命がけなんだ。


「なぜ・・・・・・そこまでしてゴア映画を撮るんだい?」

「なぜならそこにゴアがあるから・・・・・・」

「そうか、ゴアがあるんだ・・・・・・」

「ゴア?」

「ゴア?」

「ゴアゴア?」

「ゴアゴアゴアッ?」

「ゴアッーー!!」

 

■ゴア映画■

血が噴き出し肉片が飛び散る!猟奇性を売りにした映画のこと。
いわゆるスプラッター映画を指す。ただしスプラッターよりも作風が若干暗め。また変態性が増している。
語源はH・G・ルイス監督作品「ゴアゴア・ガールズ」からであろう。



釈放後イッテンバッハ監督は懲りずにゴアな「新・ゾンビ」を撮るんだけど、相変わらずだ。
何も変わってない。とりあえずバカとグロとゾンビを撮りたかったんだなあ、みたいな。自分が主役で出てるし。
まーあれやこれやと文句ばっかり言ったような気がするけど、ドイツホラーには期待してる。
かつての名監督が衰えを隠せない今、ドイツから誰か出てきてくれないかなあ、と。
本数めちゃくちゃ少ないんだけどね。

それでー、肝心の「ネクロマンティック」はどうなったのー?
もちろん規制にひっかかった。
本国で大問題となり、裁判所からフィルム破棄を宣告されちゃった。当たり前だ。

端的に言えば「ネクロマンティック」は変態をそのまま描いた映画。屍姦癖のある人は見ててそれなりに楽しいんじゃない?
こんなのちげーよ!って言われたら、ごめんなさい。ごめんなさいじゃねえや。去勢しろ、去勢。


 

ねたばれあらすじ+感想


(注!めちゃくちゃ気分悪くなると思います。グロいのダメな人は見ないでインスマウス)

 

ネクロマンティック1

 

本作品は、製作国で上映禁止処分を受けた作品のため、
日本でのビデオ発売における素材確保が充分でない箇所がございます。
可能な限りの復元は行いましたが、見苦しい場面等に関しましては
ご了承いただきますようお願いいたします。



半ば脅し文句とも取れる前置きが綴られて、さあ始まり、始まり。

 

死体清掃業者に勤めるシュマトケは性癖と実益を兼ねたネクロフィリアだった。

死体の一部を家に持ち帰り、同居人ベティと変態プレイを楽しむ毎日。

血風呂、屠殺ビデオ、死体3P・・・・・・。

変態ライフを満喫していた2人だが、ある日シュマトケがリストラされてしまう。

「私が死体を見つけてこいって言うの!?」

怒り狂ったベティは死体と共に駆け落ち。シュマトケに三行半を叩きつけたのだ。

愛する2人を失ったシュマトケは、街で娼婦を買って自分を慰めようとする。

しかし筋金入りのネクロフィリアのため、どうしても勃起しない。

「勃たないの?ダメねえ」

バカにされたシュマトケは発作的に娼婦の首をしめて殺害。

その場で屍姦を楽しむ内に、たまたま通りかかった目撃者も殺してしまった。

ついに殺人犯になってしまったシュマトケ、失意のままベッドに寝そべっても、既に慰めてくれる死体はいない。

止まない絶望感と性衝動の中で見つけた安息、それは・・・・・・。

 

 

 

〜本気のしるし〜

 

 

しるしその1 交通事故死

 

冒頭で車に乗った男女が突然事故死する。
男はシートにもたれかかったまま絶命。女は上半身がちぎれて外に飛び出している。
そこへやってきたシュマトケとその他清掃員ご一行。
女の内臓を素手でわしづかみ!(手袋くらいして下さい)飛び出た腸をぐっと握ってぎちぎちっと引っぱり出す。
臓物は「死霊のえじき」のように豚やら牛やらのを使っているのだろうか。やけにリアル。

清掃が終わると、シュマトケは自分のアパートに帰ってくる。
そして現場からくすねてきた目玉を、慎重な手つきでホルマリン入りの瓶に保管する。
見渡すと部屋の中には標本がいっぱい。さまざまな種類の内臓、眼筋がまとわりついた目玉、そして人体解剖図。
それらを笑いながら眺めるシュマトケとベティ、もといバカップル。もうこの辺でやばい。

 

しるしその2 血風呂

 

バカップルの超絶変態プレイ。血液を風呂に流し込み、まっかっかになって感じる。
まずはベティ。真っ赤な風呂に入ってフツーに汗流してる。今にも鉄臭い香りが漂ってきそうだ。

二度目はシュマトケ。今度は猫風呂だ。
ベティに振られた後、腑抜けになってしまったシュマトケは突然何かを思いつき、
飼っていた猫を檻から出して、コレクションの内臓を食わせる。
猫がむしゃむしゃ内臓いただいてる間、シュマトケは蝋燭に火をつけ、ベティの写真を燃やす。
めらめら燃えてぐにゃりと歪むベティの笑顔。泣きそうな顔で失恋の傷を噛みしめるシュマトケ。

ふいによみがえる別れの瞬間の記憶。抑えきれない憎悪。
怒りに燃えたシュマトケはお食事中の猫に忍び寄る。
ギャーギャー暴れる猫をおもむろにビニール袋に突っ込んで、床に向かって叩きつける。

グジャッ!グジャッ!

ズタボロになった猫の死体を風呂場の上の棚に置いて、自分はゆっくり湯ぶねにつかる。
そして、棚の上からピチャッ、ピチャッと垂れてくる血を頭から浴びる。
しまいには猫の臓物を手にとり、身体にこすりつける。乳首、胸、首・・・・・・。

口。

喰っ、喰いついたッッーー!!

タオルだっ!タオルを投げろっー!!

 

 

しるしその3 ウサギ殺し

 

どこで手に入れたのか知らないが、ウサギの屠殺シーンを延々と映したビデオ。
身も知らぬおっさんがウサギを木の棒で殴り倒してから、喉を切りつけ、ちゃーっと血を抜いていく。
そして亡骸を板に吊るしてせっせと皮を剥いでいく。目の玉をナイフでくりぬくシーンがグロい。
押し出すんだよな、ウサギの頭押さえて。眼窩から目の玉が出てきたところを刃物で、ぐりぐりっ、すぱん、と。うわ。

このシーンで殺されているうさちゃんは本物。殺した後でちゃんと食べたそうです。そうしないと動物愛護団体がウルサイらしい。
というか、ウサギが殺されることより映画自体にもっと重大な問題があると思いませんか?思ってはいけません。

俺は動物とは言え、現実で殺したシーンを見せて観客にホラーさせるのは、ホラー道に反すると思うので、このシーンだけは嫌。
ホラー映画は好きだけど、スナッフ・フィルムは大嫌いです。スナッフフィルムを混ぜた映画も。人喰族のような。

 

 

しるしその4 死体と3P

 

いつもは持ち帰っても内蔵や目玉くらいのものだったシュマトケくんだけど、今度は死体丸ごと現場からくすねてくる。
捕まるぞー。ってそんな忠告を聞くくらいなら、ここまでやらないだろう。
もう見た瞬間もの凄く気に入ったんだろうね。たぶんチェックポイントがあるんだよ。
死後何ヶ月とか、内臓がどの程度腐敗してるとか、目玉はついてるか、ベロは残ってるか、みたいな。
今回はかなりストライクゾーンど真ん中の、一目惚れ級の死体だったのだろう。
ちなみに死体は湖の底から揚がったもの。長い間放置され、ぐじょぐじょになってる。

隙を見て死体袋を持ち去り、車のボンネットに押し込んで何食わぬ顔で帰ってきたシュマトケ。
ジッパーを開けて出てきた死体、よくよく見ると半分ミイラ、骨が見えてる。
死体の造詣が割とリアルで、グロさは我慢できなくもないが、鼻から来る。
気を抜くと死んだザリガニ放置したような匂いが漂ってきそうだ。これがキツイ。

でそんな死体を、バカップルがなでまわす、なでまわす。もうこれでもかと愛撫する。キスまでする。
糸引いちゃってる。何の糸なんだろう?とは余り考えないほうがいいみたい。
死体の感触を十分楽しんだバカップル、もちろんこれで終わるわけがない。

やっちゃった。

死体と3P。

でも死体だから、身体はぐちゃぐちゃ。崩れてちんちん使い物にならないのでどーすんのかな、と思っていたら、
パイプをギコギコと切断して、アレに見立てて死体にあてがっちゃう。で問題なくファックと。
ちがうちがう。問題あるよ。痛いだろうが、そんなことしたら。フツーのパイプだよ、バイブやペニバンじゃなくて。

プレイだって多種多様。ベティが死体にまたがって後ろからシュマトケが攻める。
死体を起こしたり寝かしたりして体位を変える。
シュマトケは目玉に食いつくし、ベティは死体の頭を自分のアレに押し付けてクンニさせちゃう。

匂い+グロの名シーン?

うーん。書いてて気持ち悪くなってきた。


 

 

しるしその5 シュマトケドリーム

 

ベティに振られたシュマトケくんが見た危ない夢。

景色はあたり一面草原。シュマトケの顔は半分腐って白骨化している。
そこへ純真そうな女が黒い箱を抱えて近づいてくる。
どうやらシュマトケへのプレゼントのようだ。

中身は生首。

なんで?

シュマトケと女は、首をラグビーボールのように投げあって遊ぶ。

なんで?

これが夢だからだ。夢なんて元々不可思議なもんだから。

シュマトケは現世の悩みから解放されたのか、完全に童心に返っている。本当に楽しそう。嬉しそう。
満面の笑みで大地をかけるシュマトケを見ていると笑うしかない。
なんだろうな。見てはいけないものを見てしまったというか。

 

 

しるしその6 シュマトケ、初めての殺人

 

いい若い男が風俗嬢とさあやるぜって時に勃たないって、人生で3本の指に入るくらい情けない出来事なのでは。
だってやる気満々で来てるわけ、最初っから。なぜ勃たない、と。
クララの弱虫!とハイジばりに叫んでみても勃たないんだろうな、そういう時って。
EDの人をバカにしてるわけじゃないので誤解なきよう。

でもシュマトケは娼婦にバカにされて、この売女!と切れて殺しちゃう。
自分の中の情けなさに対する怒りをどこに向けるか、それって大切だ。じっと我慢だ。そんなこと全然思わないけどね。
首締めて相手が死んだ瞬間ビンビンに復活するシュマトケくんを見れば、どーしようもねえなこいつ、って思うしかない。

見所はたまたま通りかかった墓守の顔面スコップ切断シーンだけど、スコップであんな風に顔半分にならないよ。
ふいやっ!となぎ払っただけで顎から上がスポーンとどっか行っちゃう。
まさかあーなるとは、ってくらいインパクトのあるシーンなので、びっくりする人多いんじゃない?俺びっくりした。

 

 

しるしその7 シュマトケハラキリ

 

殺人を犯し絶望感に見舞われたシュマトケくん、ついに割腹自殺オナニーという新境地を開拓した。


マジで?


と思わず言いたくなる、性と死がダイレクトにリンクした危険なシーン。容赦ねーな、ドイツ人。
このシーンの見所はひとつ。飛び出るせーし。量が凄い。ピュッピュッ出る。マグカップ一杯分くらい出る。

 

刺す!刺す!刺す!

 

ピューー!!

 

刺す刺す!!

 

ピュー!!ピュー!!

 

刺すピュー刺すピュー刺すピュー!!!


 

途中からせーしに血が混じってイヤな気持ちになるんだけどー。

痛いよ。腹ブッ刺しよりこっちの方が痛覚刺激される。
つーか、なんでそーいうとこ凝るかなあ、ブットゲライト。スコップで顔飛ばすシーンはめちゃくちゃ適当なくせに。
何言ってんだ!当たり前だろ!奴は本気なんだよ!

でシュマトケの自殺シーンはその異常性もさることながら非常にアンチ・キリスト的。
シュマトケが自殺する前、丘の上から飛んでる鳩を眺めてるシーンがあるんだけど、
どういうことか、シュマトケは突然何かに気づいたような表情で、わいわい野原を走り回っちゃう。
なんでかなこれって思ってたら、次のシーンで磔になったキリストの十字架が出てくる。ああそうか、と。

聖書の有名なエピソード、ノアの箱舟において鳩は神の使いとして現れる。
それぞれの宗派によって(聖書を元にした色んな宗教があるので)解釈は様々に分かれているんだけど、
一般的に平和の使者、安息をもたらすもの、ってイメージで捉えられてるみたい。
たぶん、死にこそ安息があると気づいたんです、彼は。
そして自分と磔になったキリストを重ね合わせて、天国に行けると願った。
でも腹刺しながら射精しちゃうんだよ。肉欲に完全に支配されちゃってるわけ。
哀しいね。キリ教信者が見たら怒り狂いそうなシーンだな。

もちろんこれはわざと。ブットゲライトの「神様なんていやしねーんだよバーカ」ってメッセージだと思う。
このシーンはちょっと宗教勉強してないと気づきにくい。俺もいっぺん観ただけでは分からなかった。
久しぶりにビデオひっぱり出して眺めてみて気づいたし、
鳩の話だって宗教詳しい子と関係を持った時に勉強してたので頭の隅にほんのり残ってただけの話。
なので、鳩が飛んでるシーンでは、安息のイメージをシュマトケの精神風景で表して欲しかった。

ただ演出が失敗しているとは思わない。丘のシーンはどこか優しげな雰囲気が漂っているし、
わざわざ磔にされた十字架を映しているところもいい。もう少し説明を加えれば、もっとすんなり違った見方ができたのになあ、と。
俺が日本人で無宗教だからそう思うのかもしれないね。アメリカやドイツではちゃんとメッセージが伝わるんだろう。

全体を通じて得た感想、ブットゲライトは映画的表現に非常にこだわっている。人物の動き、風景、カメラワークで魅せる。
安いピアノの調べでちょっとムードを削がれてしまったけれど、ジャンルの選択としては合っていると思う。
セリフが極端に少ないところも特筆すべき部分で、説明的になっていない点が凄い。
気合入れて映画作ってんだなって思わせてくれる。入れる対象が間違っているような気もするけど。

一切セリフで説明しない、というのはネクロフィリアについてもそう。
そもそもシュマトケとベティが何故ネクロフィリアになってしまったのか、理由はまったく語られない。
そんなことどーでもいーじゃん、という。
じゃあ何か?君は彼らに悲劇的な過去でもあってそれでネクロフィリアになってしまったのなら擁護する気になるのかい?
アブノーマルさを分かってやれるのかい?(この口調むかつく)、んなわけねーだろ、とブットゲライトは思ってそう。たぶん。

でその本気の姿勢が比較的ノーマルな自分からすると説得力があっていい。
変態ってこういうことなんだ、変態はこうなんだと、セリフで言わせない。
逆に言えば、映画的表現に富んだポルノムービーと思われてしまいがちなんだけど、
屍姦癖の青年の破滅的な一生を最後まで描いたことで、物語としてもまとまっていると思う。
説明不足なのは、自殺に至るまでのシーンだけ。
とにかく、ひたすら嫌悪感を与えようというブットゲライトの意志が映画から恐ろしいほどに伝わってくる。


 

とりあえず率直に思ったことを書くと


1 ノーマルでよかった。

2 インポテンツにはなりたくない。

3 そんなにせーしは出ない。



 

続いてネクロマンティック2。1では主にシュマトケ、男のネクロフィリアを描いていたんだけど
2では女のネクロフィリアを描いている。続き物なので両作一気に観た方がいいです。
こんなグロ映画2本も観たくねー!って人はネクロマンティック完全版をどうぞ。
こちらは1と2の過激なシーンだけを編集したダイジェスト版に仕上がっています。


 

 

ネクロマンティック2

 

白昼堂々とシュマトケの墓を掘り起こす女がいた。

彼女もまた、ネクロフィリア。

新聞記事で読んだシュマトケの死に様に惹かれ、彼の死体を盗もうとしたのだ。

女は無事シュマトケの腐乱死体を持ち帰り、さっそくセックスを試みるが、

あまりの腐臭に耐えられずバスルームで嘔吐してしまう。

仕方なくシュマトケの屍を切断して捨てる女。

しかしどうしても頭とペニスだけは捨てられず、冷蔵庫に保管するのだった。

ところで女には恋人がいた。恋人はポルノビデオのアテレコを演じる声優。

デートを繰り返し、親密になるにつれて、女は一般的な恋愛を経験していく。

しかし屍姦の魅力にとりつかれた女が一般的なセックスを楽しめるはずがなかった。

男は恋人の異常な性癖に嫌気がさし、ついに激怒して怒鳴りつけてしまう。

生きている男とセックスしても、快感を得られない。

海を眺めながら、恋人との関係に悩む女。

結論は出た。

或る日、女は男を呼び出し、そして・・・・・・。

 

 

 

〜愛のかたち〜

 

 

かたちその1 墓泥棒

 

てゆーかフツー墓掘る?そこまでするかぁ?

って言ってもするんだろうな、我慢できない人は。白昼堂々ってとこが凄いね。何やってんだ墓守は。
でちょっと待て、ヒール履いてる。ヒール履いて墓堀んなよ。
とまあ冒頭からブットゲライトの適当さが伝わってくるね。この雰囲気、どう言えばいいのかなあ。
藤子F先生の気合が入ってない部分の絵、かな。キャラが直立不動で目の焦点が定まってない。テンション的にはそんな感じ。

「監督、どうすんですか!女主人公にしちゃって!死体どうやって手に入れるんすか!」

「うーん・・・・・・(2分ほど熟考)・・・・・・まあいいや。掘りゃいいじゃん、掘りゃあみたいな。

で、ギィ〜〜と棺を開いて出てきたシュマトケ死体は打って変わって驚くべき凝りよう。
ごめんなさい、俺が悪かった、と謝りたくなるグロさ。

死体になったシュマトケくん、この時点では服を着ているんだけど、既に全身粘膜。
緑黒いんだ、色が。絶妙に気色悪い。コケ蒸してるというか、変なもの混ぜたコールタール色というか。

でそんなグロ死体のズボンをむんずと掴んでずりずり引き摺り下ろす女に、ちょっと感じた。ここだね、見所は。

ちなみに、ネクロマンティックに出てくる女優さん、美人でスタイルいい人ばっかり。
ベティにしろ、今回の女ネクロにしろ、娼婦にしろ。正統派ドイツ美人(アダルトサイトの宣伝文句みたい)だね。
2の主役を演じてる女優さんはブットゲライトがバーでスカウトしたそうです。
というかブットゲライト、ネクロ1撮った時まだ学生だったんだよな。驚き。

前作のミイラ死体もたいがいだけど、シュマトケ死体はその数倍臭う。
ザリガニ+ドブ+腐った味噌汁・・・・・・なんでもいいや。
グロに弱い人、こっから先は早送りした方がいいかもね。
吐いちゃうぞー。

 

 

かたちその2 ベティ登場!

 

前作でシュマトケ捨てて死体と駆け落ちしたビッチ・オブ・ビッチ、ベティが再度登場。
今ごろどうして出てきたの?もしかしてベティ、女、死体シュマトケで3P?
3Pですかー。やったー。見たい見たい。

違います。シュマトケの墓を掘り起こしに来たんです。

考えること同じなんだな、どいつもこいつも。

暴かれた墓を見て愕然とするベティ。棺は既にもぬけの殻。文字通り略奪愛だ。
ベティはからっぽの棺を眺めながらシュマトケとの思い出に浸り、自分の決断が間違っていたことを知る。

その頃、シュマトケは新しい彼女と着せ替えプレイを楽しんでいた。仲良く並んで記念撮影。

哀しい。

死体になってからモテモテになることが。

 

 

かたちその3 切断!

 

腐臭に耐えかねた女は愛するシュマトケを泣く泣く切断する。
アルコールをぐびっと飲んで、ノコギリ片手に解体作業に向かう姿がどこかたくましい。
バラバラにするのは辛い。でもせめてあなたの一部を持っていたい。そんな愛のかたち。

ううん・・・・・・。

どうなんだろう、これ。実際。

執着心が強い人、少しくらいなら共感してしまうのでは。阿部定の気持ち分かるかも、って人。

話逸れるんだけど、恋愛感情を調べる心理テストでLCDテストってのがあって、面白かったので載せておきます。
LCDテストは恋愛感情がどこから来るか、その傾向を調べるテスト。
質問項目がエロス、ルーダス、ストルジュ、プラグマ、アガーベ、マニア、六つの尺度に分類されていて、
それぞれの得点の高い低いで自分の恋愛感情のおおまかな所在が分かるというもの。


■エロス 恋愛至上主義で、ロマンティックな考え方や行動を取る。外見や雰囲気を重視し、一目ぼれしやすい。

■ルーダス 恋愛にゲーム的思考を用いる。相手に執着しない、常に距離を取る付き合い方。同時に複数の相手と交際できる。

■ストルジュ 極めて友情に近い恋愛感情。長い時間をかけて育まれる愛。

■プラグマ 相手に対して厳しい規準を持ち、恋愛を社会的地位向上の手段と捉える。

■アガーベ 犠牲愛。相手のために自分自身を犠牲にすることをいとわない。

■マニア 非常に強い独占欲を持つ。嫉妬、悲哀など激しい感情の波にさらわれがちになる。


マニア得点が高い人は、それだけ相手に執着しやすく、場合によっては相手のモノを持ち歩きたい、なんて思うこともあるんだって。
本やサイトで見つけたらやってみては?マニア得点の高い人は要注意だ!阿部定予備軍!って嘘だよ、嘘。

(一応やってみたんだけど俺はエロス、ルーダスが平均よりちょい上、ストルジュとアガーベが高く、プラグマとマニアが鬼のように低かった)

話戻そう。

バスルームに寝かされたシュマトケを眺める女。さようなら、お別れのキス。そっから先が地獄。
のこぎりで手首から首へ、足へ、そしてチンコへ。順に解体していく。
相変わらず見ているだけで漂ってくる腐臭。加えて切断音が凄まじく、聴覚まで汚染される。

ごじゅっごじゅ・・・・・・じゅっごじゅっご・・・・・・激しく動かして・・・・・・、じゅりじゅりじゅりじゅり・・・・・・。

不快な旋律にのせて続く解体作業。死体を捨て去るためには、内臓を取り出さねばならない。
許してシュマトケ、活きのいい内臓がでろん。にゅるりと飛び出て、ぶじゅっ、ぐじゅっ!

で無事バラバラになってビニール袋に詰められた死体、どーすんのかなー、と思ったら、シュマトケの墓に放置。
戻すんかい、と突っ込むしかない。しかも墓荒らされたままだ。誰か気づけよ、と二段に突っ込ませる演出。やるなブットゲライト。

残されたシュマトケの形見、女が冷蔵庫に保管したのは、首と、ペニス。
世の中顔とチンコか。顔とプッシーか。それでいいのか?いいんだよ、それで。

 

 

かたちその4 満たされない性欲

 

ノーマルな彼とネクロ女の恋愛。遊園地や公園でデートを繰り返す。
しかしその間にもシュマトケの顔が頭から離れない。家で語らう時だって、親族の葬式の写真を見せちゃう。
「ほら、これがお婆ちゃん、いい死に顔でしょ?」みたいな。
俺は(ていうか普通の人なら)この時点で警戒するだろうけど、男は何か変だな、くらいにしか思ってないんだ。

気づけよ。

でノーマルな男とどーやってセックスするんだろう、と思っていたら
まず絶対女性上位、そしてマグロ強要、あげくの果てに吊るして写真を撮る。

うーん、でもやりそうな気がする。

実際、ブットゲライトは獄中のネクロフィリア(♀)にインタビューしたってくらいだから
ひょっとしたら本当にやってるのかもしれないね。特に絶対女性上位ってとこがやけにリアルでイヤだ。
そしてこんな細かいところまで凝るブットゲライトはやはり本気だ。

ところで、ブットゲライトは女性的な感性を持っていると思う。
というか、ネクロマンティックにはいわゆる男らしい人物がほとんど出てこない。
誤解しないように言っておくと、父性を感じさせる登場人物がいないということ。
シュマトケはあんな夢を見てしまうくらい繊細で、俺が引っ張ってやる!的なたくましさなんか微塵も感じられない。
ネクロ2の彼氏だってなよなよしていて、職業はポルノビデオのアテレコ。
実際にどうこうするんじゃなくて、画面上でセックスしている男女を見て、ニセモノの声を充てることしかできない。
話している印象もどこか弱々しく、同時に優しさを感じる。

映像で言えば、遊園地で観覧車に乗っているシーン、骸骨の模型を組み立てるシーン、海を眺めるシーン、
それらに女性がしずしずと物思いに耽っているような繊細さを感じる。
カメラを担当しているイェリンスキーと監督ブットゲライトの波長がぴったりあったのか、
セリフの少ない映像がどこまでも感傷的、ロマンティックに見える。
ようするに、属性的にはラブストーリーなんだ、ネクロマンティック2は。きちんと恋愛映画してる。
凄いぜ!ブットゲライト!


 

かたちその5 ゴマちゃん殺し

 

だから実際に動物殺すのはやめろっての。それ映画ん中でグロシーンとして使うのは。

前作はウサギ、今回はアザラシ。漁師が丸々と太ったアザラシをさばいていく。
意外だったのは、頭から順に皮を剥いで行くこと。あんまり機能的なさばき方じゃないかな、って。
鋭利なナイフはアザラシの柔らかい腹にするりと進入し、大量の血液とともに臓腑を鉄板の上へ流しだす。
顔の皮膚と筋肉を削ぎ落とされたアザラシは、赤黒い血だまりの中、
むきだしの頭骨に生きている時と変わらない純朴そうな目を覗かせていた。

前回はシュマトケ、ベティの変態プレイに使用されていた屠殺ビデオ。
今回は女ネクロとその友人達が鑑賞している。そう、こいつらもネクロフィリアなのだ。
主人公の女合わせて4人いたから、ドイツには少なくとも6人のネクロフィリアが存在していることになる(1人死んだけど)。
恐るべしドイツ。みんな美味そうにピザほうばりながら見てるんだよな。ドイツの変態は伊達じゃない。

まあそんなことはさておき、この女、上にも書いたけど自分がネクロフィリアだってこと隠そうとしないんだよね、男に対して。
ネクロ友達とパーティーの後、男が部屋に入ってきて「なに観てたの?」って聞く。
屠殺ビデオはマズイ、いったいどうやってごまかすんだろ、って思ってたら
「友達がビデオ持ってきてくれたのよ、うふふ」ってアザラシビデオ見せちゃうんだ。何考えてんだこいつ。
当然男はブチギレ、「いいか、あんな変態どもと金輪際つきあうんじゃねえ!」とまくしたてる。
ここで出た。ネクロマンティックシリーズ最大の決め台詞。


「性器をアップで見せる方がよっぽど変態よ!」


「みんながみんな同じものを見て興奮するわけじゃないわ!」


 

逆ギレ?

 

うーん。でも一理あるか。(あるんかい)

結局、死体を好きになったのが悪いとしか言いようがない、本当に。俺だって

「耳舐めんな、耳たぶ噛むな」

ってもし言われたら(言われたことないけど)、「みんながみんな同じことをして興奮するわけじゃないわ!」って叫ぶしかないもんな。
なんだろう、村上春樹の「羊をめぐる冒険」を読んだ時は、春樹氏分かってる、怖いな、と思ってしまったバカなので。
「羊をめぐる冒険」にはキキ(魔女の宅急便とは何ら関係がありません)って女の子が出てくるんだけど、
彼女は普段ショートヘアで耳を隠していてパッとしない女の子、でも耳を出した瞬間、周りの世界が変わるくらい可愛くみえちゃう。
そうなのだ(なのだ)、耳を隠すか隠さないかで、女性の魅力は俺基準30%くらいアップするんだって。もう世界が広がっていく。
あ、フツーかなって子でも耳の形ですごーく可愛く見えたり、美人に見えちゃう。

何が言いたいかってーと、自分の性癖ってどうしてそうなったのか説明できる人いる?
俺できない。気がついたら女見る時絶対耳チェックするようになってたんだから。
たぶん成長する過程で何か耳好きになる出来事があったか、積み重ねてきた経験で耳フェチになったんだろうけど
忘れちゃってるんだ、たぶん。だからネクロ女が逆ギレする気持ちも分からなくはない。心情的にはね。
てゆーか、上の耳好き発言を少しでも変態だ、と思った方は屍姦癖と一般的な性癖がそんなに変わらない事に気づくと思う。

違いは、それが犯罪か、そうでないか。

もう1つ、屍姦は通常のセックスのように性で生を確認するのではなく、
死で性を喚起させ、その上で生を確認する。逆説的で、不器用だ。
生理的嫌悪でイヤってのはともかくとして(そこが大事なんだが)、理屈上の違いはそれだけなんじゃないの。
ぶっちゃけ、きっかけは死を怖いと思うか気持ちいいと思うかの違いだけなんだ。
はっきり言って大して変わらないのかもね。一歩間違うと・・・・・・。

というわけでネクロマンティック2から得た教訓。性癖を咎められたら逆ギレしよう。

せーのっ



「みんながみんな同じものを見て興奮するわけじゃないわ!」


 

 

かたちその6 死体+生チン=絶頂

 

鳥が空を舞う。海を眺め、男との関係について真剣に悩む女。
結論は出た。電話で男を自分の部屋に呼び出す。入り口でキス、そしていきなりセックス。
シャワーを浴びず、電気も消さず、ヤリたいパワーMAXの男女は激しくお互いを貪りあう。
騎上位で攻める女、男の手を握りながら激しく動きつづける。
男が達しようとした瞬間、女は隠し持っていたナタで・・・・・・。

 

首切断!

 

このシーンは壮絶。グロイ・イタイ・インパクトの三拍子揃ったスプラッターの名シーン。
そりゃ首は太いから一気にスパンと切れるわけない。刃は男の首に半分ほど刺しこまれて止まる。
ショックに歪む男の口からぐぼぐぼっ!げじょげじょっ!と不快音が漏れ、
部屋いっぱいに血が噴き出す中、女は左手で男の髪を押さえつけ、右手を上下させナタを押し込んでいく。

ゲボッ、グボッ!プギャッ!

脊髄でつっかかってるのか、左右に激しく首が揺れる。切り口びろびろ。身体はびくびく痙攣。
こんなとこだけリアルな雰囲気が漂う。

で女が次に取った行動、ペニスの根元をヒモでぎゅっと縛る。もちろん、萎えるのを防ぐため。
だから痛いっつーの。なんでそーいうとこ凝るかなあ、ブットゲライト。見てるだけでちんちん痛い。
で死体は依然としてびくびく痙攣、ベッドが揺れるくらい跳ねてる。太股と腕しか映さないのでやけに気持ち悪い。

ペニス縛ったあと、女はダッシュでベッドを離れる。

あ、あれか!あれを使うのか!

持ってきたのはそう、シュマトケくんの首。
シュマトケのペニスは使えない。しかし死体じゃないと感じない。
女が取った最終手段は死体の顔と生身のペニス。

あとはもうガンガン腰動かして、アンアン喘いでイッちゃう。普通にセックスしてる時と全然違う。
血塗れのままイッた後は、満足そうに男の死体とシュマトケの顔に添い寝。


で舞台は一転、産婦人科。

スタスタ歩いてきた医師が女に一言。

 

 

「おめでとう、妊娠ですよ」

 

 

・・・・・・・。

 

どうなんだ、このラスト。また神なんかいねーんだよバーカ、かよ。
アンチキリスト叫ぶからドイツで上映禁止になっちゃうんだよバーカって言われちゃうゾ。
神様いないってのには完全に同意するけど。

で今まで女、女って書いてたけど、それは主人公の名前が最後まで分からないから。(彼氏の名前はマーク)
名前も知れない謎の女、職業看護婦、アパートに一人暮らし、好きな色は赤(敢えて外した派手系?)ってのが分かるだけで。
あとは割とインテリアに凝ってて、美に対しては一言ありそうな女、それだけ。
ネクロ1と同じように敢えて何も語らない。それが怖いといえば、怖いね。
屠殺ビデオでネクロ友達が集まるシーンだって、ブットゲライトは「こんなのいっぱいいるんだぜ」って効果を狙っていたのだと思う。

それからネクロ2は1よりも官能度がアップしてる。
1でははっきり言って気持ち悪いだけであまり色っぽさを感じなかったセックスシーンだけど、
2ではちゃんと色っぽく撮れてる。セックスの最中に顔を交互に撮ったり、舐めるように足から胸へとカメラを動かしたり。
演技だって上手い。途中から感じなくなって冷めた女の顔なんて最高に上手い。男オゥオゥ喘いでるし。寂しくてもう見てらんない。
エロビデオみたいにアソコを直接的にガンガン出してるわけじゃないんだけど、カメラワークと音で語る間接的な色っぽさがある。
こういう撮り方もできるんだなー、と。デートシーンの映像と似たような感想。
ネクロ2は女性の方が支持しているらしく、それもうなづける。

続き物で同じテーマを扱っておきながら、まったく違った楽しみ方ができてしまうネクロマンティック。
アングラ物の一言で片付けるには惜しい、でも同時にアングラじゃなくなったらやだな、と思える映画。

グロに耐えられるんだったら、観てみよーぜ!

そんな風にお勧めはしたくないんだよね。映画はまあ、いいとは思うんだけど。


 

END

 

 

どうですか?気分悪くなりましたか?

シーン思い出しながら書いてる俺も気分悪いです。

 

えーとー

次回のー

ホラー映画レビューはー(やる気なし)

今回ネクロフィリアがテーマだったからー

死体つながりでゾンビいっとく?

 

いいねぇ〜〜。

 

それでは、また。



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