SCENE 31 戦闘終了
第肆話 「これから先の未来も」
アスカの名を呼びながら弐号機の手を取るシンジの初号機。
アスカを、この世界を守ることをシンジが決意した瞬間、巨人は光の中に消えた。
そして他の使徒達もまるで幻であったかのように消滅して行くのだった。
誰もが呆然とする中、その様を俯いて見送ったカヲルはNERVの通路でシンジに問う。
「きみは幸せ?」 シンジの答えは、
「これからもっと幸せになる」
頷いて微笑んだカヲルの表情はまだどこか寂しそうだったが、
いつもの彼らしい、風のような笑顔だった。
通路へ消えて行くその背をどこか遠くに感じるシンジ。
彼は角から現れたアスカの手を取り、少年の日と同じように言った。
「一緒に帰ろ」
最終章 また会う日まで
アスカに大声で呼ばれ、ハッと現実に戻るシンジ。
現実では自らを爆弾に宇宙から降って来る使徒が迫り、支えるレイも限界に達しようとしていた。
レイの名を叫びながら使徒を支え、倒すシンジの初号機。
これで使徒は全て殲滅。光の巨人もシンジの幻だったのか、姿を消していた。
「感動した!」という総理の演説が行われ、パレードが行われる。
大勢の人達の歓声を受けながらシンジ達のパレードカーは走る。
そこには予備の相田までもが搭乗していた。しかも一番前。
彼は何もしてない。
祝福されながらもどこか浮かない顔のシンジ達。
それはこのパレードが戦勝パレードではなく、
人造人間を完成させた科学への賞賛という趣旨の元に行われている
建前めいたものだったからだった。大人の体面に付き合わされている感が否めない。
ここへ来てどこか冷めている少年達だった。
SCENE 32 別離
第肆話 「これから先の未来も」
当面の使徒は倒されたが、今後どの国にまた現れるかは判らない。
NERVは各国の防衛強化とEVAの研究のために、パイロットの少年達を派遣する決定をした。
それはもう、シンジ達は同じ国で同じ時間を生きられないことを意味していた。
納得がいかない少年達。荒れるトウジだが、ミサトが悔し涙を隠すように頭を下げ、
外聞かまわず承諾を願うと、彼ももう何も言い出すことは出来なかった。
要請を受け入れ、いつか皆でこの町へ帰って来たときのために
タイムカプセルを埋めようと提案するケンスケ。
各々思い思いの物を埋める彼らだが、ただ見ているだけのカヲルにシンジが気付く。
シンジはあの日、皆で撮った河原の写真を取り出し、一緒に埋めようとカヲルを誘った。
また皆でこの場所へ集まることを約束しながら――
最終章 また会う日まで
シンジは日本、カヲルはロシア、レイはフランス、ケンスケはアフリカ、
トウジはアメリカ、アスカはドイツとそれぞれ派遣されることが研究所の
掲示板に貼られていた。
他に貼られている張り紙は、
「献血に協力のお願い」「新型ウイルスの注意」
「バンドメンバー募集」「盗難品返却のお願い」「自衛官募集」「水道局のポスター」
「子猫さしあげ 赤木リツコ」「プール割引チケット配布のお知らせ」
彼らは留学みたいなもんとあっさり理解を示した。
どうせ最後なら
パーッとやろうと親父くさい提案をするアスカ。
その言葉に触発され、エヴァンゲリオン完成記念と銘打たれたパーティーで
ひたすら飯を食う少年達。当然ケンスケもひたすら飯を食っている。
彼は遠慮というものを知らないようだ。一人だけ
戦ってないのに。
そんな中、レイに連れられ指を絡めてダンスを踊るシンジ。
アスカも負けてはいられないとケンスケを連れ出して踊った。この人、
戦ってないのに。
SCENE 33 出航前
第肆話 「これから先の未来も」
港に日本へ残るシンジ以外の面々が集まっていた。
最初の出航はアスカ。船が出てしまえば、もう会うことは出来ない。
神妙な表情でアスカの前に現れたのはケンスケだった。
ケンスケが何かを言い出そうとしたとき、アスカは陰りのない笑顔で言った。
「あんたが友達で良かった」
告げられた“友達”という言葉に、ケンスケはショックを笑顔で包んだ。
そしてシンジに想いを告げずに行くのかと真剣に迫る。
奇行を繰り返し、非難を浴びた彼だが、彼もまたナイスガイだったのだ。
一方のシンジは決心がつかなかったのか、ギリギリになって港へと走っていた。
シンジを見付け、呼び止めるレイ。最後に再び告げる好きという言葉。
だがシンジの答えは、もう決まっていた。
走り去るシンジの背を笑顔で見送り、しかしやがて涙を零すレイ。
これで良かったのかと問う背後のカヲルにレイは青空を見上げ、迷いなく再び微笑んだ。
レイが振り返った視線の先、カヲルは薄く輝いていた。
キミがうらやましいと微笑んだカヲルはそのまま、皆の記憶からも薄く白んで消えた。
レイやシンジが大人になっても空は同じ色なのだろうかと、きれいな青空を見上げながら。
最終章 また会う日まで
「アスカを俺にくれないか?」と、この場面でとち狂ったことをシンジに申し出るケンスケ。
大した伏線もなく、また
一人だけ戦ってないのに図々しい。
あまりにも図々しい。
さらに
「碇には綾波がいる。アスカは俺が、どうだろう?」と
最低の発言を繰り返すメガネ。
言うまでもないが、
アスカにも選ぶ権利はある。
夕日を見ながら黄昏ているアスカの背から、シンジが問い掛ける。
「僕とケンスケのどっちが好き?」
傍観者としては聞くまでもない質問。答えは一瞬で返って来るものと思われたが……
「私たちはそれぞれ別の道を行く。それで良いじゃない」
アスカは確かな返答をくれなかった。
どうしたんだ、アスカ!?
キミはあんなに、
ちょっとウザいくらいにシンジシンジだったじゃないか!
一体何があったんだ!? 何で唐突に相田と同格にされてるの!?
相田に何をされたんだ、アスカ!! ねぇちょっとオイぃぃぃ!!
尚、これは途中、綾波ルートを通ったからだとかそういう要因ではなく、
どんなルートを通ってもアスカの対応は同じである。
敢えてつれない態度を取るアスカの作戦なのか、
ここまで来て前後の繋がりがないのかは解釈の分かれるところだろう。
夜、ベランダから夜景を眺めるシンジ、レイ、アスカ、そして
相田。
別れ際、レイに一緒に行こうと潤んだ瞳で誘われる。
レイを連れて、アスカと相田をこの場に残したまま去るのか、あるいは……
最後の選択である。
そう、前作同様、
途中通ったルートに関係なく、
最後の選択のみでEDが決まるのだ。
SCENE 34 アスカを選ぶ
第肆話 「これから先の未来も」
出航直前、心でアスカの名を叫びながらシンジは走る。
加持が同伴なのにあって、浮かない顔のアスカ。
次に会ったら気持ちを伝えようとは思っているが、会う勇気がない。
そこへ耳に響く、今度は音として出たシンジの声。
「アスカ!」
最後の抱擁を交わしても尚、言い出せないアスカの口が割れる前に、
シンジはキミが好きだと、そっと囁いた。
最終章 また会う日まで
コミック版に倣い、当然アスカとこの場所へ残る選択をする。
レイは去り、相田もまた去っていった。後者とはもう会うこともないだろう。
アスカはうれしいと喜び、シンジの唇を情熱的に奪うのだった。
出航直前、別れを前に最後の抱擁を交わすシンジとアスカ。
出航のアナウンスが響き、船から離れようとするシンジだったが、
名残惜しいアスカは彼を抱き締めて離さない。船が動き、焦るシンジ。
「わ、ちょっと待って! 僕は降ります!」
だが彼の声は甲板には届かず、そのまま船は出てしまうのだった。
アスカのせいで降りられなくなったと怒るシンジ。
それはそうだろう。
日本が遠くなって行く。そのまま二人は
ドイツへと消えた。
新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2nd 完
COMIC ORIGINAL SCENE
さて終わったわけだが、コミック版はこの後、カヲル絡みのエピローグが挿入され、
渚カヲルを主人公に迎えたまったくオリジナルの第二部へと続いている。
回収されなかった伏線はそちらでの展開に期待しましょう。
それでは、林ふみの先生にありがとう。ここまで読んでくれた方にありがとう。
うちから
PS2版を買ってくれた方に
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。