ニッセイ同和損保……
グリーンスタジアム神戸⇒Yahoo!BBスタジアム⇒スカイマークスタジアムにしつこいほど繁殖し、
居座り続ける看板中の看板。言わずと知れた看板界のホームラン王である。
これが再現されずして何かリアル野球ゲームか。そんなこだわりを持つファンも多いことだろう。
ある日、私はさる筋から情報を得た。
ある野球ゲーム内で確かに、確かにニッセイ同和損保が再現されているというのだ。
ちょっとしつこいんじゃないのか?というくらい再現されているというのだ。
その看板を一目見たい。
それが、私とプロ野球スピリッツ2との出会いだった。
▼コナミのリアル野球ゲーは駄目
もう名前も忘れた一番最初のコナミのリアル野球ゲーを私は喜び勇んで買った。
パワプロのシステムを踏襲し、見た目がリアルになったそのゲームは非常に美しく、
新時代の到来を一瞬予感させたがやればやる程バランスの悪さが露呈され、
ちょっと球に触っただけでホームランになる重力異常に憤慨。
その後、
熱チュープロ野球というナムコ製の名作が現れたことでこう認識された。
コナミのリアル野球ゲーは駄目。
ディフォルメされたパワプロシステムはパワプロにこそ合うのであって、
リアルでやっても劣化パワプロにしかならない。
▼熱チュープロ野球襲来
先に書いた通り、熱チュープロ野球(現ベースボールライブ)の登場は革命だった。
特に、各投手、各球種ごとに球威、キレ、制球が設定されるというデータの細かさは、
新時代の野球ゲームが到来したことをプレイヤーに理解させた。
権利を独占していたコナミはパワプロという非常に出来の良い野球ゲーを有してはいたが、
そこに甘んじていたことが浮き彫りとなったのだ。野球ゲーはまだ進化の余地を残していた。
▼プロ野球スピリッツ2完成
しかし、先にパワプロという革命を起こし、ファミスタを抜き去ったのはコナミである。
あるいは熱チューの存在がコナミを本気にさせたのかも知れない。
コナミが本気で作ったリアル野球ゲーム、プロ野球スピリッツ2に触れて私は、脱帽した。
再度、革命は起こったのだ。これぞ永年追い続けた野球ゲーの完成系だ。
今、ここで断言する。
プロ野球スピリッツ2こそ、
現在地球上に存在する全ての野球ゲーの頂点であると。
ニッセイ同和損保がどうだとか言っている場合ではないのだ。
尚、先に断っておくと、私はプロスピの1にはノータッチなので、
実は1から名作だったのかも知れない。パワプロも10か11以降、飽きたのでノータッチ。
▼一歩抜きん出た地球最強の要素
大まかなシステムやモードはめんどいので
公式サイトを見てください。
■CPU打者のバランスが地球最強
自分の腕にもよるが、難易度はパーフェクト以上を推奨する。
“強い”までは投球術を知ることで毎回完封が可能なのだ。
逆に、パーフェクト以上となると現実さながらの考えた配球を行わない限り
CPUを抑え切るのは不可能で、延々と打たれ続けることになる。
前の打席を記憶して狙い球を絞って来るので単調な配球はカモにされるのだ。
先頭打者を抑えただけで心底安心してしまう野球ゲーはなかなかない。
だが、それが理不尽な強さではなく、配球とベストピッチ(リリース時の目押し)を駆使することで、
良い投手が好調ならば二桁奪三振も充分狙える絶妙のバランスなのである。
そこが何よりこのプロスピ2が地球最強たる所以だ。
従来の野球ゲーのように毎回毎回初球から打って来るワンパターンな打者はいない。
現実さながらに7回で100球投げる“必要性”のあるゲームなど今まで存在しなかった。
調子の悪い投手やそもそも能力の低い投手ならば5回で100球使う覚悟で、
ボール球を見せながら低め低めに制球してなんとか持たせる必要がある。
三振を取れなくても、ここまで強いとアウト一つで嬉しいのだ。
むしろ初球凡退してくれたらガッツポーズ。
あまりにも素晴らしいため、この神がかったバランスは奇跡なのではないかと疑ってしまう。
下手にイジると秋の決定版や3で改悪になってしまうのではないか? そんな予感さえする。
とりあえず、野球好きでかつ野球ゲーム好きならば、この2は絶対押さえておかねばなるまい。
感動はお金で買える。
■制球力が大事なのが地球最強
先にも少し書いた通り、このゲームはリリース時に目押しを要し、
これは投手の制球力によって大幅に難易度が変わって来る。
これがなかなか難しく、例えどんなに速いストレートを持っていようと、
曲がるスライダーを持っていようと、たくさん球種を持っていようと、
制球力がないなら現実通り使えない投手なのである。
この目押しに失敗した場合はあらぬコースに球が行ってしまうばかりか、
ボールの当たり判定が大きくなり、それがボールゾーンへ行くならまだ良い、
ストライクゾーンに行ったりしてしまうと簡単に長打という制裁を浴びることになる。
目押し完全に成功(ベストピッチ)でゴルフボール、やや失敗で野球のボール、
大失敗でスイカになってしまうと思えば良いだろう。
今作はゲームバランス上、変化球を削っているパワプロとは違い、
“全球種再現”というのを売りにしているのだが、弱い球種はキレは当然、この制球がないために
実戦で投げた場合、逆にカモにされてしまう可能性が高く、
リアルでありながらのゲームバランスの維持にも成功させている。
つまり熱チューが起こした革命である、球種ごとにキレと制球力を設定という要素を
このプロスピもしたたかに取り入れているのだ。
とはいえ、熱チューの目押しは簡単であり、プロスピ2ほど制球力が重要ではなかった。
■ストレートが強いのが地球最強
パワプロを始めとした従来の野球ゲーでは、変化をしないストレートはどうしても弱く、
またCPUもこの直球には滅法強いケースが多かったため、ストレートは駄目。カス。
ストレートを投げる奴は阿呆といった認識が一般的となっていたのだが、
このプロスピ2では全体的にもそしてCPUにもストレートが強い。
単に球速の問題でもなく、キレのあるストレートが実に強い。
渡辺俊介の130kmのストレートが現実さながらに強いのである。
松坂や新垣などの150km超えはもう投げた瞬間にバットを振らねばならない。
(※ボールの全体スピードは変更可能で遅くすれば見てからでも打てるのでお好みで)
このゲームはパワプロのようにボタンを押した瞬間に球を捉えるのではなく、
スイングの間があってから後に当たり判定が発生するようになっている。
なのでストレートに絞った場合は相手が投げた瞬間にスイングし、
当たり判定発生前までの間にカーソルを合わせるといった荒業が必要となる。
つまり直球の速い投手は変化球と完全に二択だ。
CPUに最も使える球種もこのストレートであり、カウント球にも決め球にも、
ストレートを投げておくのが何よりも有効。全ての基本はストレートなのだ。
反面、変化球(特にフォーク系)が弱く、
ストライクゾーンからボールに落としてもなかなか振ってくれないのが数少ない不満点。
■疲労度という要素が地球最強
各選手には疲労回復度というパラメータが設定されている。
これはペナントレース時にのみ影響するデータで、
一年間普通にフル出場する城島のような選手はS、高卒ルーキーなどはFになっている。
つまり、試合に出る度に“疲労度”という物が蓄積されるのである。
疲労が溜まってしまうと絶不調になるばかりか、経験上ケガもし易くなっている気がする。
そのため、疲労回復度は年間スタミナと同義で、
いくら能力が高かろうとこれが低ければ1年通して出場することは困難なのである。
それによって常にレギュラー陣だけ試合に出していれば良いのではなく、
大差が付いた場合等は控えと入れ替え、疲労の蓄積を防ぐのが大事となって来る。
控え選手の存在も従来の野球ゲーより遥かに大事なのだ。
■先発調整力という要素が地球最強
珍しいパラメータに“先発調整力”というものがある。
これは通常のスタミナとは別のスタミナで、普通の選手は中5〜6日くらいでMAXとなる。
MAX時のスタミナは通常時の倍以上となり、
つまり
先発調整さえさせれば誰でも先発で長いイニングを投げることが可能なのだ。
現実の中継ぎ投手だって先発で5回投げるスタミナは当たり前にある。
1イニングでヘロヘロになるなど有り得ない。
ついにゲームでこの矛盾の答えが示されたのだ。
この調整力が高い選手は短期間で先発スタミナの貯蓄が可能で、中4日等をこなすことが出来る。
また、先発調整で得たスタミナは中継ぎ登板時には発揮されず、
その場合、当然、緊急登板になるために調子も最悪になってしまう。
事前に“先発調整”か“リリーフ待機”でしっかりと分業を行う必要がある。
リリーフ投手は先発調整力が低い代わりに前述の“疲労回復度”が高く、連投が可能なので、
やはり先発も可能だがリリーフの方が向いている、ということになる。
長期的に投手陣の台所を見ておかなければペナントを勝ち抜くのは難しい。
地球最強のペナントレースシミュレーターだ。
▼何がそんなに面白いのか
何より、優れたCPU打者の思考と目押しの難易度によるピッチングが面白い。
手に汗握るどころではない。心臓がバクバクする。
1点差を守る後半にカブレラを迎え、確実に目押しを行える強心臓は私にはない。
プロ野球ファンの方はヒイキ球団が1点リードの9回を想像して貰えると解り易い。
驚いたことに、たかがゲームの分際で同様に胃が痛いのだ。
よく、現実の中継ぎ抑えの投手が「先発だと球種が使える」と発言する。
それを聞いて「中継ぎでもその球種を使えば良いじゃないか?」と思った方もいるだろう。
私もそうだ。球種をたくさん持っているなら中継ぎでだって使えば良い。相手も絞り難くなるだろう。
だが、その認識は大間違いだったことがこのゲームで思い知らされた。
先発ならば余裕のある場面でさして得意でない球種を投げることも可能だろう。
そしてまた長いイニングを躱し切るに当たってそれも大事な要素だ。
CPUが前打席の配球を記憶し、狙い打ちして来るこのゲームでもそれは重要となっている。
しかしストッパー、セットアッパーに“余裕のある場面”などは存在しない。
投げる場面全てが緊迫した僅少差の試合である。
そんな場面で自信のない球種が投げられますか……?
私には投げられない。そこで目押しを失敗すると終わってしまうから。
現実のリリーフ投手も、失投してしまうとそこで終わりだ。
自信のある球種しか投げられなくなるのも当然だろう。
だから佐々木に代表される抑え投手はあまり多球種を投げないということを理解した。
篠原がストレートしか投げなかった意味を理解した。
このプロスピ2はそこまで本物に迫ってしまっているのである。
だいたいにして、打つのはどんな野球ゲームでも面白い。
だが、投げるのは作業であるし、またCPUのバランスによっては
毎回同じパターンで三振が取れたりして非常につまらない物が多い。
パワプロですらこのつまらなさを完全に払拭は出来ていない。
ピッチングが面白い野球ゲームはもうそれだけで素晴らしい作品なのである。
このゲームには“選手プレイ”という、
打席は当然、守備時にはベースカバーや中継、バックアップ等、
全て手動でお気に入りの一選手のみを操作出来る野球経験者には夢のようなモードがある。
なのに、ピッチングが面白すぎるために今までパワプロで擬似的にまでやっていた
小久保の打席のみ操作する“小久保プレイ”では物足りないと感じてしまった。
なんとも皮肉な話だが、全選手を動かした方が面白い。
それは当たり前のようで、実に物凄いことなのだ。
間違いなく、
2005年4月現在地球上に存在する全ての野球ゲーの頂点と断言出来る作品である。