プロ野球スピリッツ4のときに「野球ゲームは完成した」と書いた私ですが、訂正します。
真の完成系はこのプロ野球スピリッツ5完全版でした。
何が完全版なのか
ついにプロスピも完全版商法へ乗り出したわけだが、さてこれの何が完全版なのか?
売りとなっている文句は最新データの全選手収録だとか、全ユニフォーム収録だとか、
とてもまたフルプライスで買うようなゲームには思えない。
旧5からのそんな程度の追加要素でまた高い金額を要求するのか? 廉価版価格で充分じゃないのか?
疑問は尽きない。
しかし、今作の真の姿は、旧5が抱えていたゲームバランスの問題点を全て消化し、
さらに打者AIまでも進化させたバランス調整版だったのだ。
確かにそれでも高いが、野球ゲームが完成したひとつの形として手に取る価値は充分にある。
どこが調整されたのか?
・打者走者の足が調整された
まず、内野安打が出ない、ゲッツーが多発するといった、
旧5で問題だった打者走者のスピードと野手の肩のバランスが完璧に調整されている。
深い当たりでギリギリの内野安打や、ボテボテでもう投げられない内野安打等も発生する。
左の俊足打者は実に嫌らしい。
この内野安打を防ぐには野手の守備力も重要で、
サード、ショートに適正の低い選手がいると内野安打が頻発することになる。
この調整で足だけでなく、守備も重要になったのだ。
・逆方向へも飛距離が出るようになった
広角打法持ちを筆頭に逆方向へもHR、長打が出るようになった。
反面、強振引っ張りが弱体化しており、捉えたと思った打球が外野フライになってしまう。
バランス的にはリアルなHR数になるし、犠牲フライを打ち易いので良い調整と言える。
・適切なバックホームをするようになった
以前はランナー3塁でとりあえず転がせばCPUはファーストに投げていたのだが、
今回は刺せるタイミングならばきちんと刺してくる。
先の打ち易くなった犠牲フライと、ボテボテの強化を利用してスタートを判断する必要がある。
・キャッチャーゴロが出難くなった
旧5ではカス当たりになるとまずフェアグラウンドでキャッチャーに捕られてしまい、
有り得ない数のキャッチャーゴロを量産したものだが、完全版では調整されている。
・最終回のエフェクトがなくなったっぽい
今までは最終回になるとCPUが突然凶暴化し、
抑えのエースが投げても防御率がボロボロになってしまっていたのだが、今作にはそれを感じない。
オートペナントでも抑えの防御率が1点台、0点台というケースが増え、
抑え不遇の時代は終わりを告げた。
・打者AIがさらに改善された
ここまでの調整ははっきり言って調整して当然と言える要素ではあったのだが、
この打者AIのさらなるリアル化の追求については評価して良いだろう。
これによってCPU戦が圧倒的に過去作より面白くなっている。
具体的にはまず、旧5よりさらにボール球を振るようになり、三振が増えたことが挙げられる。
難易度スピリッツでも有り得ないボール球を振ってくれたりするのだから面白い。
(三振でなく)空振りも増え、CPUが非常に人間臭い動きをするのだ。
そして、それでいて決して弱いわけではない、というのが旧5との最大の違いだろう。
目押しと配球に気を配り、細心の注意を払って全力で抑える。ギリギリの戦いが味わえるのだ。
手に汗を握るどころではない、汗をダラダラと掻く。
三振狙いの決め球にストライクのストレートと、
膝元に沈むスライダーが使い難いのがやや気にはなるが、それでも充分な調整と言えるだろう。
・スピン○が追加された
一部、直球にキレがあるとされる選手にこの能力が追加された。
ホークスの和田等、球威はないけどキレはある、といった選手の再現性が増したと言えよう。
実際、和田の直球の球威は「スピン○」が付いたことにより、何とBからDにまで下がっている。
かなり強い能力なのかも知れない。
・暴投が増えた
新垣システムが導入されてしまった。
以上により、“野球”としてのバランスが完璧に成立している。
改善もあれば改悪もあるシリーズなので、ひとつの完成系としてこの5完全版、
調整版でフルプライスという暴利ではあるが、永久保存しても良いだけの価値はあると言えよう。
ひとつだけ問題点
野球バランスが完成し、もはや演出にしか手を入れる場所がないのではないか?
というステージへ来たこの5完全版だが、ひとつだけ気になる点がある。
それは、特殊能力の「パワーヒッター」が強すぎはしないか? という部分である。
自分で使っても異常に強いし、CPUが使っても強い。
今回、強振引っ張りが弱体化した中にあって、「パワーヒッター」持ちだけはそれを感じない。
実際、自分で使用した「アーチスト」の選手はペナント35HRで良いバランスに終わったのに対し、
「パワーヒッター」の選手は
108本も打ってしまった。カンストした。除夜の鐘じゃないんだから。
同じ人間が使ってこれだけの差がある。
CPUの強さも露骨で、難易度スピリッツの場合、燃えプロのホーナー並に当たったらHRだ。
「パワーヒッター」と相対した際、あまりにもHRが出過ぎる。心が折れる。
かと言って難易度を下げると今度は弱すぎになってしまうので、これがまた困るのである。
6ではスピン系能力のバランス調整を入念にお願いしたい。