美形会議3 遥かなる美形
「すまん、PS2版KOF2002で暴走庵の収録が長引いて遅れてしまった。八神だ。
 まだ美形会議3遥かなる美形…… ん?」





…………

「……誰もいないな。どうなっている。
 すでに時間を12分もオーバーしているというのに、奴等はまだ来ていないのか?」





…………

「……ぬぅ、どうもしばらく来る気配がないな」





…………

「……仕方がない。一人で始めるか。
 まずは挨拶から入るんだったか? いつも遅れてしまうので始め方が解らん」





…………

「……過去ログを検索して来るか」







「やぁ! KOFの美形キャラ、八神庵だよ!」




「わざわざ説明せんでもええやろうけど、
 俺がKOFの美形キャラ、八神庵様だ」




「さて、うら若き乙女達を熱狂させる
 そうそうたる美形キャラの俺がもう来ているのだが、
 奴等は何をしている」



「お前が何をしとるんや」




「…………」




「何やお前、それはわいらをおちょくっとるんか?」




「侮辱かい?」




「……いや、そんなつもりは無い。
 それより貴様等は今頃現れて、仕事でも入っていたのか?
 まぁいつも遅れる俺に貴様等を責める権利が無いのは重々承知だが」



「何を言っている。右京さんはともかく僕らにそうそう仕事が入るわけはないだろう」




「ゴルフや」




「……ゴルフだと?」




「アンディめ、わいがゴルフ苦手なん知っといて誘いよってからに」




「はははは! でもフォームはバッチリ決まってましたよ、ロバートさん」




「まぁ美形キャラやからな。
 そうそう無様な姿は見せられへんちゅーこっちゃ」




「さすがロバートさん! その意気があればすぐに上達しますよ」




「フッ、まぁ言っとれ言っとれ。いつか目にもん見せたるわ」




「ッ! 貴様等! この会議を何だと思っている!!
 仕事で遅れるならいざ知らず、言うにことかいてゴルフだと!?
 社長にでもなったつもりか! 何様のつもりだ!!
 その体たらくだから貴様等には俺や橘右京と違って仕事が回って来んのだ!!」


「……私が……優勝した」




「…………」




「やっぱ長物使わせたら右京さんには敵いませんわ。
 賞品の蟹はガルシア財団特別ルートからの特注品やさかい、
 よう味わって食うて下さい」



「う〜ん、最後のツバメ包みは敵ながら天晴れというか、惚れ惚れしてしまったね。
 これが美形キャラの立ち振る舞いだと思ったよ。
 賞品はてっきりワインだと思ってたけど、
 右京さんの健康を気遣って蟹を選択していたロバートさんの心遣いも憎いね」


「何やアンディ、お前、賞品出させよ思てわいを呼んだんやないやろな?」




「ははは、まさか」




「はははは」




「……ふっ」




「…………」




「で、何や。そろそろ会議を始めようやないか」




「ああ、時間も押している。良いかな?八神君」




「……それは構わんが、その前に前回の経過を教えてくれ。
 橘右京のプリントは達筆すぎて俺には読めなかった」




「…………」




「僕も聞きたいんだが、紅丸君はどうしたんだい?
 キミが来ているということは、彼は不参加なんだろうけども」




「ああ、奴はここに来ると自分が駄目になるとかなんとか……
 一応、前日に家まで行ったんだがな。チャイムを押しても出て来なかった。
 それより前回俺が帰った後の経過を教えてくれ。
 どういうわけか過去ログにも無かったぞ」


「ああ、それはなくて当然や。
 あの後、色々あってな。わいらも帰ることにしたんや」




「何だ、そうか」




「紅丸君はどうしたんだろうね……」




「まぁ心配しても始まらんで、アンディ。
 わいらと絡んで格の違いを知ってしもたんやろ。
 そこで潰れるか這い上がれるか、ヤツも岐路に立たされたっちゅーこっちゃ。
 それより、今日のテーマはわいから出してもええやろか?」


「俺は構わんぞ」




「ああ、少しナイーブになりすぎていたよ。
 ここは厳格な会議の場だ。私情を挟むわけにはいかないね。
 それじゃ頼むよ、ロバートさん」



「ほな、任せてもらおか。
 せやな、まぁ言うまでもなくわいら美形キャラはモテる。さらに言えばモテモテや。
 彼女の一人や二人は当然やろ。せやからつまり……
 美形キャラは総じてカワイイ彼女持ちなんや! どや!?」


「…………」




「そうだね……」




「ん? 何や、アンディ。お前さんにも舞ちゃんっちゅうカワイイ彼女がおるやないか。
 何でそんな風前の灯みたいなテンションやねん。
 ネタ振ったわいがちょっと寒いやんか。堪忍してぇな」



「……いや、勿論だよ。ロバートさんは正しい。
 ロバートさんにはユリさんが居るしね。ロバートさんの発言は理に適ってると思うよ」




「……圭殿」




「そうか、それならええわ。
 つまりわいにはユリちゃんが、アンディには舞ちゃん、
 右京さんには圭さんがおるっちゅうこっちゃ。
 ほんだら八神、お前の彼女はどないやねん。
プロフィールに大切な物は彼女やの新しい彼女やの書きくさりよってからに」


「俺のプロフィールに俺が何を書こうが俺の勝手だろう。
 それにどうかと聞かれても彼女は一般人だ。貴様等のような野蛮な女とは違う。
 こんな場所でプライバシーを公開するわけにはいかん」



「何やて!? ユリちゃんのどこが野蛮やっちゅうねや!?」




「そうだ! 舞はともかく圭さんのどこが野蛮だって言うんだ!
 冒涜は許さんぞ!!」




「……圭……殿……!」




「それはその通りだが、小田桐圭は別に橘右京の彼女ではないだろう。
 事実、生まれの良い彼女はサムライスピリッツ天草降臨の時点で
 すでに名家の許嫁が居ると資料にはある」



「ガハァ!」




「血を吐いた!」




「右京さんが血ぃ吐きよったで!
 せ、せや! あかんかったんや! どうでも良い取り巻きにばっかモテて
 本命にフラれるんがギャルゲーの嫌みなライバルキャラみたいやとか
 言うたらあかんかったんや!!」


「ウゴハァ!」




「謝れ、八神庵!」




「右京さんに謝れ!」




「ちょ、ちょっと待て! 貴様等何を言っている!
 傷口を抉ってしまったのは謝罪するが、
 ギャルゲーがどうのこうのはかけらも言ってないぞ」



「何や自分、前髪垂らしてギャルゲーの主人公気取りかいな!」




「ギャルゲーは関係ないだろう! 何故ギャルゲーにこだわる」




「八神庵、謝罪の意思があるならキミの彼女の情報を公開して貰いたいね」




「せや! 自分、妹もおんねんやろ! 妹のプロフィールも公開したれ!
 こちとらもう10年もお前の妹が出て来んの待っとんねや!!」




「何を言っている。彼女の話だろう。妹は尚更関係無い」




「関係ないことあらへんがな! わいは妹キャラが好きなんじゃ!
 それが理由や! それだけがあればええんや! はよ晒してまえ!」




「何だそれは。尚更言えんぞ。口が裂けても言えん」




「早くしろ、八神庵! あんまり引っ張るから右京さんも怒っているぞ!」




「……空気読め!」




「いや空気を読んでいるからこそ言えん」




「何や自分、わいが金ぎょーさん持っとるからて、
 それだけでギャルゲーのライバルキャラ扱いしとんやないぞ!」




「だからギャルゲーは関係ないだろう! 誰も言っていない」




「これは匂うな…… 八神庵の彼女には何か秘密が隠されている……」




「実はもうフラれとるとかいうオチやないやろな」




「そ、そうだ! 資料によく目を通すと、
 2000年を最後に八神庵の大切な物は「なし」になっている!
 八神庵はすでに彼女持ちではないんだ!!」



「おお……! ホンマや!!
 つまり八神庵はすでに美形キャラでもないっちゅうことになる!」




「貴様等のような奴がいるからプロフィールに書くのはやめたんだ」




「ちりてのち のざらす者の 悲しさよ」




「何だ貴様、何故そこで挑発的な詩を詠む。
 俺は書くのをやめただけだと言っている」




「本当に彼女が存在するのなら是非プロフィールを公開して証明して貰いたいね」




「せや! 妹もや!」




「妹は関係ない! それに俺は彼女の話はせん。
 そんなに彼女の話がしたいのなら貴様等の話を聞いてやるから好きなだけ話せ」




「何や、わいにユリちゃんの魅力を語らせるっちゅうんかい。
 こりゃあ半日作業やで?覚悟したれよ?
 ――なんつってな! ユリちゃんはトリに決まっとるわな!
 せやな、まずはアンディから行ってみよか!」


「えっ? 僕かい!?」




「何や、どした? ノリ悪いな。何や都合でも悪いんかいな?」




「……いや、八神君も言っている通り、彼女の話はやめよう。
 これは僕たち美形キャラの未来のかかった会議なんだ。
 こんな修学旅行の就寝前のようなノリで流すことは出来ない」



「珍しく貴様と同意見だ」




「……そう……だな」




「まぁ…… そらそうやな。わいもちょっと調子乗りすぎたわ。
 脇に逸れすぎると戻って来れへんのは、こういうトークも美形業界も同じやしな。
 わいかて椎拳崇みたいになるんはご免や」



「そうだな、こんなくだらん彼女の話などをしていても業界の未来は開けん」




「せやからこっからは妹の話にする」




何でだ!!