sagittal画伯
美形会議 FIRST CONTACT
「やぁ! 餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ!」




「もうわざわざ説明も要らへんやろうけど、
 わいがNBCの美形キャラ、誇り高き最強の虎こと
 ロバート・ガルシア様っちゅーこっちゃな」



「…………」




「右京さんや」




「サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」




「八神だ」




「ほな、全員揃ったところで美形会議を始めよやないかい。
 今日はどないなテーマを持って会議に臨むんや?」




「それが、最近少し悩んでることがあって……」




「何や? どないしてん、お前さんらしくもない。
 そない悩んでばかりおったら老け込むんが早うなってまうで?
 親友のわいが聞いたるさかい何ぞ話してみ」



「そうだな、美形キャラの悩みというのも
 解決出来れば今後の指針として役に立つかも知れん」




「あ、ありがとう、二人共……
 美形会議を私物化するようで気が引けるけど、
 僕もみんなに聞いて貰わないともう自分を見失ってしまいそうで……」



「そない水臭いこと言うなや。
 お前の悩みはわいの悩みも同然や。
 わいら全員、一蓮托生やないかい。人類みな兄弟やないかい」



「……うむ」




「遠慮は要らん。話してみろ」




「ああ、実は……」







「OH! アンディさん! アンディさんじゃないデスか!」




「き、君は…… ボブ君! ボブ・ウィルソン君だね!?」




「ハーイ! お久しぶりデース。
 最近、KOFでも見かけないので心配してマシタ」




「い、いや、それは大人の駆け引きというヤツでね。
 あまり安売りしても僕の価値が軽くなってしまうだろ?
 だから少しばかりファンを焦らしてみようかと考えて、
 SNKプレイモアさんに無理を言って休暇を貰ってるんだよ。
表向きは斬影拳のキレを餓狼2レベルに…… というかまぁ、そんな感じでね」


「そうでしたカ」




「ボブの方こそどうなんだい? パオパオカフェ二号店の方は?
 繁盛してるのかい?」




「あぁ、もうあんな店はやめマシタ」




あんな店!? どうして!?」




「HAHAHAHA!!」




「いや、何を笑ってるんだい!? どうして!?
 それに何か声も遠いし姿もぼやけてるんだけど、一体何があったんだい?」




「いやぁ、すみマセン。
 ワタシ見ての通り背景なもので、そこは大目に見てやってくだサーイ」




「背景!?」




「HAHAHAHA!!
 アンディさんは闘いに夢中で気付かれなかったかも知れマセンが、
 ワタシKOF2002に出演しているのデース」



「出演って、背景じゃないか!
 それは一般的には出演とは呼ばないぞ!」




「いえいえ、そうは言われマスが慣れれば背景も悪くないのデース。
 こう……」










「一定の間隔で腕を上げ下げしているだけで
 食べて行くには充分なお金が入って来るのデース。
 この味を知ったらもう飲食店店長なんてやってられまセーン。
 殴られて痛い思いをする必要もありまセーン。
オマケにボケ防止にもなると来たらもうここから抜け出せませんよ」


「ボ、ボブ……! 君は何を言ってるんだ!?」




「あ、そうデス! 機会があったらアンディさんもこっちへ来ませんカ?
 アンディさんならよく溶け込んだ良い背景キャラになれると思いマース。
 きっと素質ありマース。ワタシが保障しマース」



うわあああ! 来るなああああああああぁぁ……!!







「と、こんな夢を見たんですよ……」




「(笑)」




「……ふっ(笑)」




「な、何を笑ってるんですか!?
 僕の話のどこに笑うところがあったと言うんですか!?
 僕の悩みは一蓮托生じゃなかったんですか!?」



「いや、笑ってへんよ(笑)」




「笑ってましたよ!!
 というか、今も笑ってるじゃないですか!!」




「いやいや、で何や?
 その悩みっちゅうんはインターネットでUPされとる料理の写真は
 なして一見グロ画像に見えてまうんか?やったかいな」



「本当に一体何を聞いていたんですか!?
 全然違いますよ! 何の関連性もないじゃないですか!!」




「……なるほど、美形キャラが背景に回される時代か。
 確かに少しばかり厄介なことになりそうだな」




「そ、そうなんだよ! なぜか頼りになるのがもう八神君しかいない!」




「うむ、貴様等は知らんかも知れんがSVC CHAOSで共演した
 ケン・マスターズという美形キャラも最近、背景キャラへ格下げを受けたと聞く。
 これは俺達にとっても他人事ではない」



「ケ、ケンさんとくらい僕だって共演している!(ネオポケのカードのヤツで)」




「ああ、わいも共演したな(ネオポケのカードのヤツで)」




「……うむ(ネオポケのカードのヤツで)」




「そうか、それならば話は早い。
 俺も最近、KOF'94RE-BOUTで何の疑問も持たずに背景をやったが、
 よくよく考えれば背景に俺の等身大POPでも置いていれば済む問題だ。
 そんなつまらん役を美形キャラの仕事として定着させるわけにはいかん」


「そうだよ! 八神君、解ってるじゃないか!」




「まぁまぁ、せやかてわいらが背景キャラなんぞにされることはないやろ。
 あそこは不人気キャラの合同墓地みたいなもんやからな。
 アンディはお前、心配しすぎや。
 そない胃を圧迫しとったら息が臭ぅなってまうで?」


「しかし、他社とはいえ現実に美形キャラがその合同墓地に……」




「それにお前さん、背景なんぞやらんでもアレで充分人気集めとるやないかい」




「……アレ?」




「ほら、アレや」








「いつのコラですか!!
 人気集まってませんよ! むしろイロモノ扱いですよ!」




「いやいや、そないなことないで?
 こうやってコラにされるっちゅーことはやな、
 それだけお前さんにコラ適正があるっちゅうことやないか。
 美形キャラっちゅうかもう、立派な美形コラや」


「それどう考えても背景以下じゃないですか!
 確かに僕の認知度の高さを認識出来たのは嬉しかったですけど、
 これ以上ないくらい一過性の出回りだったじゃないですか!
 そう月日が流れたわけでもないのに
今や誰も僕のコラで盛り上がってる人はいないですよ!」


「そうか? わいは盛り上がっとるけどな……」




「うむ…… ケン・マスターズの問題は事実ではあるが、
 また他社の問題でもある。必要以上に気にする必要はないのかも知れん。
 しかしだからと言って何も対策を立てないのもまた問題だとは思うが……」



「ああ、本当に、僕らはどこへ向かって行けば良いんだ……」




「おい、京。あれ美形会議じゃねぇか?」




「あぁ? 何だ、あいつら。あの何の教訓もねぇ会議まだやってたのか」




「おい、アンタら! 相変わらず暇そうだな!」




「あ、紅丸や」




「紅丸君だ」




KOFXIも発表されたってのに、よくやるよ、アンタらも」




「貴様、京! 邪魔をする気なら消えろ。目障りだ」




「まぁそう言うなって、すぐに帰るからよ。
 俺これから紅丸とキャビア食いに行くんだ」




「俺様の奢りでな。KOFXIの収録も一段落付いたし、
 まぁ撮りの帰りにそういうのも良いんじゃない?」




「良いねぇ」




「ところでおたくらはどうなのよ? そろそろ撮り入るんじゃないの?」




「え? 僕……?」




「NBCかいな?」




「いや、KOF」




「お、KOFは…… なぁ?」




「あ、ああ……」




「ん? どした? 歯切れ悪りぃな。まさかアンタら招待状が来てな……」




「しょ、昇龍弾?」




「いや、昇龍弾じゃなくてよ」




龍斬翔!!




「龍斬翔は関係なくてだな。招待状だよ。“しょう”しか共通点ねぇじゃねぇか。
 で、どうなの? 来たの?」




「…………」




「…………」




「…………」




「…………」




「ふわぁぁあ(眠みぃ……)」




「……もうええやんか、KOFは。要らんやろ、そろそろ」




!? い、いきなり何言ってんの!?」




「だいたいXIて何や? 11て何や?
 そない増やしてどないすんねや。大家族スペシャルちゃうねんぞ、お前。
 ドラゴンクエストよりぎょうさん出とるやないかい。
 お前それ…… 大家族スペシャルちゃうねんぞ、お前」


「た、確かにXIと言われるとその数字に圧倒されてしまうね」




「だから、それだけ人気があるってことだろ!」




「人気? 業界有数のナルシストキャラ言われたお前が、哀れやのぅ、紅丸。
 そない形のないモンにすがるようなったら人間しまいや。
 最後の最後に頼れるんは己自身やろが。それが美形キャラやろが!
 それが美形キャラちゃうんかいな!!」


「さすがロバートさん! 良いことを言う!」




「そ、それとこれとは違うんじゃねぇの!?」




「いやいや、紅丸君はロバートさんの言葉をよく噛み締めるべきだね」




「せや! KOFはもうええやろが、ホンマ。
 わいに招待状よこさんようなレベルの低い大会、こっちから願い下げやで!
 アンディかてもう出たない言うとるわ!」



え!?




「しょーもない大会やで、ホンマ。全然オモロないわ!
 これからは…… NBC一本でええんちゃうの? 業界的にも。
 アンディかてもうKOFは要らん言うとるで、実際」



「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、ロバートさん!?
 た、確かにロバートさんの意見には賛成の意思表示はしましたけど、
 僕はそこまでは言ってないですよ!?」



「……あぁ?」




「で、ですから、要らないとか出ないとか、そういうことは言っていないですよ!?
 そ、そりゃあ僕だって今のKOFの人選には疑問を持っていますけど、
 呼ばれたら呼ばれたでですね、あの、より良い美形キャラとKOFのために、
 尽力は惜しまないという気持ちは常々持っているわけでですね」


「何だ、アンタ、結局出たいんじゃねぇか」




「そんなわけあるかい! アンディはお前、誰よりも早ぅKOFを見限った男やで!
 そこら辺の世渡りテクニックでアンディに勝る男はそうそうおれへんで、お前!
 伊達にコラになった男やないねんで、お前!
 このKOF'97んときのストーリー見てみぃ、ボケ!!」



 国際線機内。何やら楽しげなジョー。それとは対照的に憂うつな表情のアンディ。
ジョー「ん? どうした? 浮かないツラして」
アンディ「どうしたもこうしたも……。僕はいいんだ。父さんの墓参りっていう目的があるからね。
 けど、おまえは違うだろ? 何の目的もなしにどうして僕についてくるんだ?」
ジョー「何の目的って、つれねぇなあ。一緒に出ようぜ、キング・オブ・ファイターズによ
アンディ嫌だ次の大会ではシングル出場して、
 世界に俺の名を知らしめるって息巻いてたじゃないか。あれは何だったんだよ?」
ジョー「いやいや、あれは嘘じゃないんだぜ!? 俺としてはそうしたかった。
 だがな、世の中にはうまくいくことと、そうでないことがあるんだ。今回はたまたま後者だ〜

THE KING OF FIGHTERS'97 餓狼伝説チーム公式ストーリーより抜粋


「……あ」




「……あ」




「嫌だっつってるな」




「見ての通りや」




「…………」




「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! いつの資料ですか!?
 97年……? 8年も前の話じゃないですか!
 この場で参考資料として持って来るには古すぎですよ!
 この8年の間に僕ら美形キャラも、その、世界情勢もですね。
色々と変化してるんですよ、刻一刻とね」


「せやからアンディは元よりわいももうKOFには出ぇへん。
 同時にわいらが出ぇへんKOFに価値はないよってに、KOFはしまいや。
 お前ら最後の撮りご苦労やったな。ええ思い出になったやろ。お疲れさん」



「ロバートさん、僕の話聞いてますか!?」




「お、おい、京! こいつら言いたい放題だぜ!?
 何か言ってやれよ、初代主人公としてよ!」




「あぁ? 俺はどうでも良いよ、別に。
 お前ら凡キャラと違って俺が切られることはありえねぇし。アニメの撮りもあるし。
 それよりそろそろキャビア行かね?」



「……さっきから考えていたのだが、良いか?」




「何や?」




「うむ、KOFがドラゴンクエストよりシリーズを重ねているという貴様の説だが、
 ドラゴンクエストには外伝的な作品やリメイクが無数に存在する。
 それらをシリーズに含んだ場合、必ずしもKOFがドラゴンクエストより
 シリーズを重ねているというわけでもないのではないか?」


(何の話してるんだ、こいつ……)




「あ、それならよ、KOFもアレンジ移植とかリメイクとか入れたら良いじゃねぇか。
 それからネオポケとかクイズのヤツも。
 おっと、アドベンチャーの名作、KOF京も忘れちゃいけねぇな」



「……むぅ、貴様に意見されるのは癪だが、確かにそれは言えるな」




「ん? 待てよ…… ということはひょっとして僕達は本当に
 あのドラゴンクエストよりも活躍の場が多いのかい?」




「ホンマにせやったら、何気にすごいな、わいら。
 少し見直したわ、KOF」




「ということは、そのすごいシリーズに出ている僕達美形キャラは、
 ゲーム業界全体で見てもトップレベルの美形キャラと言えるんじゃないのかい?」




「ん…… まぁな」




「……せやな」




「そうだな」




「そうだよ! KOF出場という経歴があればその時点で業界トップの美形キャラなんだ!
 一作や二作外されたくらいで僕の経歴に傷が付くことはない!
 KOF出場という経歴がある時点で僕達は誰もが羨む美形キャラの頂点なんだよ!!」



「せや! そしてそのKOFを卒業したわいらは
 部活のOB並に無意味に顔のデカい存在なんや!
 いつもはエバりくさっとる先輩がヘコヘコ頭下げるような絶対的な存在なんや!
 KOFにも出てへんようなマイナー美形キャラ共とは格そのものが端から違うんや!」


「…………」




「あ……」




「あ……」




「あ……」




「そう言えば橘右京はKOFには出ていないな。
 アナザーストライカー辺りで出ていそうなものだが、俺の知る限りでは見当たらん。
 パンダは居るのだが……」



「ガハァ!」




「あ、謝れ、八神庵!」




「右京さんに謝れ!」




「右京さんに……! いや、まぁ俺は別に良いんだけどね。
 俺はそっち側のキャラじゃないんで」




「なぁ? もうほんとキャビア行かね?
 興味ねぇんだよ、美形会議なんてよ。料理も出ねぇし。ユキとはケンカになるし」




「知らんわ! そないラブコメの話なんぞ。
 とにかくもうKOFの話は聞きたないわ、美形会議的には。
 今、絶賛稼動中なんはNBCやろが! NBCの話したれ、ボケ!
 それが先輩に対する態度かいな、ホンマに! わいは嘆かわしいで!」


「あぁ? 別にわざわざ話すこともねぇだろ。
 ケッ、はいはい、ロバート先輩、KOF卒業お疲れさんでした」




「そうだな、ますます暇になったことだし、ゆっくりと湯治にでも出掛けてくださいな」




「おうおう! 湯治でも法隆寺でも平等院鳳凰堂でも行って来たるわい!
 アンディと二人、文化遺産見物ぶらり旅じゃ、ボケ!
 土産はコインか!? キーホルダーか!? 木刀か!?」



「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、ロバートさん!?
 僕はまだ、ほら、まだあの隠しキャラ?というか、
 そういう系統の話が来るような気配を感じるんですよね、最近。
 それに文化遺産はいつでも見に行けますし……」


「あぁ…… 未練がましいな、アンタも。
 だからアンタら自体がもう古寺みてぇなもんなんじゃねぇの?
 はっきり言ってアンタが出ようが出るまいがKOFファンは興味ねぇんだよ。
 昔親父が買って来た声変わるガスくれぇ興味ねぇよ」


「そもそも'97んときに自分でKOFは嫌だっつってたじゃねぇか。
 こっちこそ要らねぇよ。帰れ帰れ、とっとと」





 国際線機内。何やら楽しげなジョー。それとは対照的に憂うつな表情のアンディ。
ジョー「ん? どうした? 浮かないツラして」
アンディ「どうしたもこうしたも……。僕はいいんだ。父さんの墓参りっていう目的があるからね。
 けど、おまえは違うだろ? 何の目的もなしにどうして僕についてくるんだ?」
ジョー「何の目的って、つれねぇなあ。一緒に出ようぜ、キング・オブ・ファイターズによ
アンディ嫌だ次の大会ではシングル出場して、
 世界に俺の名を知らしめるって息巻いてたじゃないか。あれは何だったんだよ?」
ジョー「いやいや、あれは嘘じゃないんだぜ!? 俺としてはそうしたかった。
 だがな、世の中にはうまくいくことと、そうでないことがあるんだ。今回はたまたま後者だ〜

THE KING OF FIGHTERS'97 餓狼伝説チーム公式ストーリーより抜粋


「……あの頃は、本当、何をやっても上手く行って、
 女性からも人気があって、黄色い声援を浴びて調子に乗ってました。
 有頂天でした。タレント気取りでした。
 でも、あの頃の僕は何も見えていなかった。
明るかったはずの僕の視界なのに、肝心な物がまるで見えていなかった。
本当に大切な物を見失っていました。それに今になって気付いた」


「…………」




「…………」




「もう今となっては取り戻せない時間かも知れませんが、
 今だからこそ、僕は今の僕で皆さんにお詫びしたい。
 本当、調子に乗って周りが見えていませんでした。
 斬影拳だけでヒーローになったつもりでいました。自惚れていました。
今の干されている僕の現状はその報いなのだと思います。本当、すみませんでした。
でも、僕はそれでもゲームに出たいんです。また斬影拳を皆に使って貰いたいんです」


「……いや、もう良いよ、解ったから」




「本当に申し訳ありませんでした。
 深く反省し、以後のこのような軽率な発言をしないよう、
 ファンや関係者様方の気持ちをまず第一に考えて行動することを誓います」



「……ああ、うん。別にそう謝らなくてもな」




「申し訳ありませんでした」




「……まぁ、その、何だ。アンタも頑張れよ。
 頑張ってればきっと良いこともあると思うしよ」




「……だよな、その内また人気も復活するだろ。
 ブームってのは、あー、一周するって言うしな」




「はい。はい…… 申し訳ありませんでした。有難う御座います」




「じゃ、じゃあ、俺達はこれでな」




「……あ、ああ。じゃあそういうことで」




「はい。どうも有難う御座いました」





「…………」



「…………」



「……キャビア、どうする?」



「……何か、食欲なくなっちまったな」



「……だな」



「…………」



「…………」




「…………」




「…………」




「……これから、どうするのだ?」




「……わいにも判らん」