蒼真画伯
第46回AMショー美形会議
「やぁ! 餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ!」




「…………」




「サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」




「…………」




「……あれ? どういうことだ? 二人しかいないぞ……
 皆さん、どうしたんでしょうか? 遅刻でしょうか?
 右京さん何か知っていますか?」



「ほろよいの しらねの美酒に べにはがね」




「……あ、そうですか。
 じゃあ、仕方がないから、会議の進行具合はプリントにまとめておくとして、
 僕達だけでとりあえず始めておきます?」



「……うむ」




「ですね。ええ、そこで今日の議題なんですが、
 “雰囲気イケメン”って言葉があるじゃないですか。
 あれが僕、気に入らないんですよね。雰囲気だけで何がイケメンなんだと!
 それちょっとイケメンっぽいだけの普通の人と何が違うのかと!
そもそもイケメンというのは生まれつき、先天的なものであって――」


「ハハハハハ!
 何や八神、お前もたまにはおもろい一発ギャグ出すやないかい!
 わいから笑いで技あり取るとはたいしたもんや」



「それ程でもない」




「へっ、あんまり煽てるとロクなことねぇぞ、ロバートさんよ」




「まったくだぜ、八神の奴を煽てたって、愛想の悪さが治るわけでもねぇしな」




「ハハハ、まぁええやないかい。
 草薙、お前も好きなモン頼んだったらええ。今日はわいの奢りや。
 お前、親父が収入ゼロやさかい、普段ロクなモン食うてへんやろ?
 格闘家は食うてなんぼや! 何でも頼んだったらええ」


「へへ、いや悪ぃな、ホント。
 駄目な親父を持つと大変だぜ」




「京、そう言うお前だって収入ゼロじゃねぇか」




「バ、バカ! 俺は学生だから収入なくたって良いんだよ!
 あ、そういえば俺、前からフォアグラってのを食ってみたかったんだよなぁ」




「フォアグラなんぞでええんかいな。ええで、好きなだけ食うたったらええ。
 もしもし? カーマンか? フォアグラ用意したってくれ。ああ、一番活きのええヤツをや。
 八神はいつもの肉でええか?」



「ああ、肉ならいい。肉なら生でも構わん」




「ほな、最上級の黒毛和牛やな。
 カーマン、これも当然、一番高いヤツを頼むで。
 あ、せや。ついでにあの腕利きの料理人も呼んだれや。
 ほら、アレや。あの、海、海原とか言うたかいな? 雄山?」


「あ、俺も俺も!」




「すまんな、かえって気を遣わせたようだ」




「何や、水臭いこと言うなや。わいとお前の仲やないかい」




「……あ、あの、ロバートさん?」




「何だったら、俺も何か食材を提供しようか?
 家が富豪で、俺も金持ちなんだよ」




「ああ、いらんいらん。今日はわいのおごりや。
 それに誰も知らんがな、そないマイナーな設定」




「こいつぅ(笑)」




「……ロバートさん?」




「おい、この乗馬マシンはここで良いんだろ? さっさと降ろしちまおうぜ」




「おお、ええでええで。
 ハハハ、いつまでもヘリに積んどっても意味がないわな。
 それにヘリの中で乗馬っちゅうのも交通の文化からして考えられん話や。
 こらわいとしたことが、美形キャラも木から落ちるっちゅーヤツやな!」



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「こらしょ、っと。
 おおぉ! さすがに筋肉がほぐれるぜ!」




「無理なく楽しくエクササイズを継続出来るな」




「せやろせやろ? このエクササイズ味おうてしもたら、もう腕立て腹筋には戻れへんやろ?
 持って帰って家で使ったってもええねんで」




「いやぁすまねぇな、何から何まで」




「これで腰痛が治れば良いのだが」




「……あの、みなさん?」




「へい、どうした八神! スピード上げて行こうぜ!」




「ふん、この程度のスピードでバランスを失う俺ではない。
 貴様こそどうした? 腰がうわついているぞ?」




「八神、てめぇ! お前が昔、俺んちに遊びに来たとき、
 散々俺にファミコンのファミリージョッキーで負けた過去を忘れちまったようだな!」




「貴様、古い話を! あの日の借りは今、この乗馬マシンで返す!」




「ハハハハ、もうそのくらいで許したったれ、草薙。
 ん、おおぉ……これ、見てみ、ほれ! わいの乗馬のアレ、ドラテクを!
 見て見てみほれ、まだまだこんなもんやないでぇ!」



「……ロバートさん!!





「ぅおっ!? 何やアンディ、おったんかいな。
 せやかてそないデカい声出さんでもええやないかい。
 何や? まだ何ぞわいに用でもあるんかいな」



「あ、あるに決まってるじゃないですか!」




「ああ、そか。すまんな、アンディ。
 乗馬マシンはわいらの分しかないんや」




「おっと、俺は譲る気はないぜ」




「俺も猫背予防機能を手放すつもりはない」




「せやな。そこの……ああ、それや。
 そこに卒業式で在校生が自分で用意して自分で座るパイプのヤツがあるやろ。
 それ出して適当にギッコンバッタンやっといてくれ。床を傷付けんよう気ぃ付けてな」



乗馬マシンの話じゃない!




「……乗馬マシンは要らんのか?」




「どないしてん、アンディ。
 そないプルプル震えたかて、人力乗馬マシンっちゅうわけにはいかんと思うで?」




「乗馬マシンが何だって言うんだ!
 大の大人がパイプ椅子でギッコンバッタンって、
 そんな光景、僕だけじゃなくて見てる人も不幸になりますよ!
 っていうか、この展開、前にも見ましたよ! 何なんですか! コピペですか!?」


「あん? コピペ? ははん、なるほど。
 アンディさんはアレですか? KOF12がまだコピペやとお思いですか?
 そいつはちょいと古い考え方とちゃいますやろか?」



「え、KOF12って……もうそんな時期なんですか!?
 てっきりまだ後、たっぷり3年はかかるものかと……
 いやしかし、どういうことだ。僕にはまだ出演依頼のはがきが届いていないぞ?」



「まぁまぁアンディ、これからやろ。
 見たところ、まだ全キャラは公開されてへんみたいやし、
 美形キャラはトリもトリの大トリっちゅーこっちゃ、多分」



「ま、まさかロバートさんにはすでに出演依頼が!?」




「うん、来とるよ」




何やてぇ!?




「何やてぇ、て何やねん。
 ああ、弱った。弱ったで、こらホンマ。
 わいの口から言うてまうのも嫌味やしなぁ。嫌味な成金キャラやないねんで、わいは。
 こらごっつ弱ってしもたわ。メシもノド通らんようなってまうかもしれん。
フォアグラとかあんま食いとうなくなって来た感じや」


……!?




……!?




「あーあ、晒してしもた! まいったで、こらホンマ。
 黙っとくつもりやったさかいについに知られてしもた!」




「こ、これは……!」




「ハハハ、あかんな草薙は! デリカシーっちゅうもんに欠けとるで!」




「……何のコラだい?」




「コラやないわ!
 こないヌルヌル動くコラ作る職人なぞ、どんだけ手の込んだコラやねん!」




「……ま、まさか!?
 本当にロバートさんにKOF12の招待状が!?」




「まぁそういうわけやから、HD画質で完全復活したわいはもう、
 その美形会議的な美形キャラ、すなわち設定上は美形キャラやけども
 その実、人気は一切ないどころか存在感も空気以下、
 っちゅう条件から外れてしもたわけで、まぁつまりもう、美形会議卒業や。
これからの美形会議の顔役はお前さんに譲るわ」


「ガハァ!」




「血を吐いた!
 そうだ! 設定上とか言ったら駄目だったんだ! 右京さんに謝れ!」




「ウゴハァ!」




「……って、やっぱり無理ですよ!
 右京さんはほとんど喋らなくて実質、居ても居なくても全然関係ないし、
 一人だけで会議なんて出来るものか!」



「…………」




「帰って来てくださいよ、ロバートさん!
 あんなに綺麗なのロバートさんじゃない!
 いつものうだつの上がらないロバートさんに戻ってくださいよ!」



「わいたちー」




「私たちはー」




「この学び屋から巣立ちー」




「何やってるんですか! 一人で卒業式しないでくださいよ!
 同じ顔三つも並べて気持ちが悪いですよ!」




「おい、ヘリが来たぜ! ヘリ!
 あれにフォアグラが乗ってんじゃねぇのか!?」




「おお、アレやアレ。お前らもうかなり腹減っとるやろ。
 キッチン付きの自家用ヘリやさかい、中でもう出来とるはずやで」




「着陸次第、晩餐の始まりというわけか」




「ぅおおおお! 喰らい尽くすぜぇぇぇ!!」




「喰え! すすれ! 余ったら銀紙に包めぇ!!」




「ま、俺も一杯やるとしますか」




「まるでお菓子の家を見せられたお嬢さんやな、ハハハ。
 京庵と並ぶKOFの顔のわいとしては恥ずかしいで、ホンマ」




「……ロバートさん」




「ん? 何やアンディ。わいらに構わんと会議進めてええねんで?
 何やったらお前も食うてもええで。
 ここだけの話、わいの美形会議とのお別れパーティーも兼ねとんやさかいな」



「……おめでとう!」




……!?




「おめでとう、ロバートさん! 僕は嬉しいよ」




「……アンディ」




「おめでとう  ロバート・ガルシア  おめでとう」




「う、右京さんも……そないアホな……
 こんなわいを、こんなわいを祝ってくれるんか……?」




「当たり前じゃないですか!
 僕達の中からHDドットキャラが生まれて、こんなに嬉しいことはないですよ!
 こんなに胸が高鳴ることはない……!」



「……うむ」




う、うぶぅ! 右京さん、アンディ……! ありがとう!
 お前さんら、ホンマにええ奴やなぁ! わいが逆の立場やったら
 HDドットペリペリ剥がして無理やりローレゾに戻したるところやった……
 ありがとう! ホンマにありがとう!」


「……ロバートさん。美形会議卒業おめでとう! 本当におめでとう!」




「すまんな、アンディ!
 わいはお前さんらでは手の届かへん遠いところへ行ってまうけど、
 美形会議で過ごした日々は一生忘れへんよってな!」



「はい……HDドットのロバートさん、素敵だよ。美形キャラだよ」




おーいおいおい! おーいおいおい!
 
ぅぅうう、お、おーいおいおい!




「さて……僕はどうしようかな」




「…………」




「……死ぬか」