「ヘーイ! クラーク・スティル中尉だ。
今日は二回目の無口メンバー召集に応じてくれたこと、感謝する。
俺も現場を任された身として、最大限有意義な会議になるよう努力するつもりだ。
さて冒頭、無口メンバーとは言ったが、
諸君らも意見があったら今日は遠慮なく口を開いてくれて結構だ。
では、よろしく頼む!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あー、口を開いてくれて結構だ。今日はよろしく頼む。
さて今回は新メンバーとして、デュオロン君にも来て貰うことになった。
皆も知っている通り、龍を追っている飛賊メンバーの一員だな。
では、デュオロン君、何か初めに言っておきたいことがあったら構わないぞ。
遠慮なく言ってくれ」
「……特にない」
「……あー、何でも良いぞ。
好みのティーブレンドでもあったら考慮しよう。
会議の席では何かと体力を使うからな」
「……これといってない」
「……そうか。まぁその、何だな、よろしく頼む」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ゴ、ゴホン!
ではまず、そうだな、今回も物静かな雰囲気なところ悪いのだが、
俺から議題を提出させて貰おう。良いだろうか?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……まぁ、良いだろうか? と聞いても
無言で返されるのは解っていたから勝手に始めるが、そうだな、
俺達無口メンバーは周囲にどういう目で見られているのか?
というのを客観的に話し合って行きたい。
無口メンバーは他人の目を気にしない傾向があるが、
そこはやはり円滑な対人関係を築くうえでも重要だと俺は考える」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……まぁ、あくまで俺がそう考えているだけなのかも知れないが、
とかくレオナ、Mrs.シキ、お前達二人には共通してミステリアスな雰囲気があるな。
それについて、無口であることとの関連性についてはどう考える?」
「…………」
「…………」
「……別に」
「……そ、そうか。
俺としてはそういう何を考えているのかよく解らんところに
ミステリーを感じてしまうのだがな」
「…………」
「…………」
「……あぁ、まぁ、そういうことで、次は男性陣だが、
ウキョー・タチバナ、モリヤ・ミナカタ、そしてデュオロン、
お前達には物悲しげな雰囲気があるな。陰があるとでも言おうか。
その辺について、無口であることとの関連性はどう見る?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……まぁ、この会議に限っては俺の方がよほど陰に満ちているよな。
この陰鬱な雰囲気……本当に気が滅入りそうだ。
戦死者でも弔っているような気分になる」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ま、まぁ、俺の愚痴こそどうでも良いよな。
余計に空気を重くするようなことを言ってすまなかった。
……あー、さて、無口メンバーにはそれぞれ雰囲気に共通点があることが解った。
周囲の目にしてもそれは同じだろう。
だが、例外として無口であるにも関わらず、
ミステリアスでも陰を背負ってるようにも見えないメンバーも存在する。
内向的だとか、人見知りといった主にマイナスイメージだな。
例えば俺にもそういった要素がないわけではないが、その違いはどこにあるのだろうか?」
「……顔」
「……顔ね」
「……顔」
「……顔」
「……顔だ」
「……顔」
「何だその一体感は! やっと喋ったと思ったらお前ら、この!
俺も顔はそんなに悪くないだろう! そしてゴロー・ダイモン!
敢えて名は伏せたがさっき俺はお前のことを言ったんだ!
何を平気な顔して集団に混ざっている」
「……むぅ」
「自分のポジションをよく考えた行動をしろ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ま、まぁ、俺も言い過ぎたがな。
とにかく無口であることはマイナスイメージを生む原因にもなり兼ねない、
言わば諸刃の剣なのではないか? と俺は言いたかったわけだ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ま、まぁ、あくまで俺がそう思っただけなんだが」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「だから何か喋れよ! 何かあるだろう!?
ああ、とかうん、だけでも良いんだ! 本当に社交性のない連中だな!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あー、そうだ。お前達の対人関係はどうなっている?
これを聞きたかったんだ。とかく無口メンバーは誤解を与え易いからな。
どうだ、お前達。人間関係は上手く築けているか?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……どっちなんだ……
まぁ、お前らはどうか知らんが、周りに理解者がいるに越したことはないよな。
レオナ、お前とは付き合いも長いが、その辺りどうだ?」
「……そうね」
「ん、どうした」
「……ノリに付いていけない同僚がいるわ」
「そうか、後で大佐にはキツく言っておこう」
「……ふぅ」
「な、何だ、そのため息は!
俺か!? 俺のことを言っていたのか!?
お前達はどういう目で俺を見てるんだ!? 俺が気になって仕方がない!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「どうなんだ、一体!
そもそもお前達、黙ってばっかりで、何のために会議に出席してるんだ!
何を求めてこの場に出席してるんだ! やる気はあるのか!?」
「……無口とは孤独なもの」
「……冷たい印象は避けられないわ」
「……理解者は得難い」
「……だが、往々にして俺達には周囲に理解者が配置される」
「……仲間、友人、兄弟、ときには恋人であったり」
「……大地の恵みか、神の意思か」
「……俺達と外の世界を繋ぐ彼らに、対人関係は集約される」
「……頼りきりになるのは心苦しいけれど」
「……二人で作る世界もあるわ」
「ほろよいの しらねの美酒に」
「べにはがね」
「な、何を言ってるんだ、お前達は急に!
何だその息の合った連携トークは! 卒業式か何かか!?
だから俺が散々そういった方向に話を持って行こうとしていただろう!?
何が神の意思だ! 最後、何で俳句なんだ、意味が解らん!
お前ら本当は仲が良いのか!? ここで仲悪いの俺だけか!? そうなのか!?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「何でまただんまりなんだ!
ひょっとして俺だけが無視されているのか!? そうなんだな!?
俺ばっかりこんなに喋らせて……もう無口キャラとは言えんとそういうことか!?
ああ、そうだよ! 俺は年甲斐のない同僚の脇にクールに佇んで、
同僚がバカ言った際にニヤリと皮肉を言うポジションなんだよ!
ああ、そうさ! 無口は無口でもお前らとは根本的に違うんだ!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……そうか、そう来るか。
ああ、解った。俺ももう喋らんぞ。これから一切、一言も言葉を発することはない。
誰も喋らない会議の重苦しさをお前達も味わうがいいさ!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「何か喋れよ! 何がしたいんだ、お前らは!
俺は戦場でもこんな孤独を味わったことはないぞ!」
「……あ、はい。もしもし。……はい。はい。了解。
クラーク中尉」
「……ん、どうした?」
「次は脇が汗ばんでそうな男性キャラ、および水虫を隠してそうな男性キャラ、
同じ空気を吸うと圧迫感を感じる男性キャラ、
後、個人的には帽子の下に何か重大な秘密を隠してそうな男性キャラ会議を行うので、
第二会議室へ移動して下さいとのことです」
「誰からの電話だ! 何の会議なんだ!
それから個人的にはって何だ! 何も隠してないぞ、俺は! フサフサだ!
お前だって見たことがあるだろう! それはお前の個人的意見か!?」
「……そう、もう終わりなのね」
「いや、まだだろう! 俺はまだ何も納得していないぞ!」
「……同情はせん。終わりだ」
「……御免」
「ま、待て!」
「……サヨナラ」
「……では、またな」
「や、やめろ! 帰るんじゃない!」
「……クラーク殿」
「何だ!」
「……脇が汗ばんでそうな男性キャラ、および水虫を隠してそうな男性キャラ、
同じ空気を吸うと圧迫感を感じる男性キャラ、
後、個人的には帽子の下に何か重大な秘密を隠してそうな男性キャラ会議には
わしも参加した方が良いのだろうか……?」
「…………」
「…………」
「…………」