サムライスピリッツ

1993 118M
生か、死か！侍魂ここにあり。

史上初の武器格闘としてSNKがコッソリ放ったお化けゲーム。
というのも時代はすぐ後に出る餓狼SP、スーパースト２を待ちわびており、
サムスピなんぞは完全ノーマークだったのです。誇張なしに。
ろくな宣伝もされなかったおかげで実際にゲーセンにブツが並ぶまで
その存在すら知らなかった人も多かったはずです。

しかしこれがまさかの大ヒットで、
28000円の家庭用ROM発売時にはなんと行列まで発生し、品切れ状態が続く始末でした。
なぜみんなそんなにお金を持っているのか。並ぶほどのものだったのか。
今となっては摩訶不思議な珍事です。

とはいえ、ただの武器ありスト２で終わらなかったのが最大の勝因でしょう。
武器ごとにリーチが違いすぎるとゲームにならない、
かといってみんな同じ武器では武器格闘の意味がない。
よしんば作ったとしても離れてチクチクやる地味なゲームになるのではないか？

第一作にしてそんな疑問を全て吹き飛ばした完成度は
奇跡の産物と言っても過言ではないと思います。

最も他の格ゲーと一線を画した点はその攻撃力です。
強斬り一発で、かつて本当に人を斬って収録されたと噂されたリアルな斬音と共に
致死量のダメージを与える様はプレイヤーを圧巻させ、そして虜にしました。
ダメージを受けると増え、攻撃力が増す“怒りゲージシステム”もあり、
怒り付きならさらにとんでもないダメージになります。
ガードされるとカキーン！と刀が弾かれ、
刀と刀がぶつかったら連打勝負のつばぜり合いが発動。
背景の竹や樽を意図的に斬れるのも刀感をより印象付けました。

必殺技よりも強斬り一発の方が遥かに減るという事実は攻撃重視なようでいて
逆に一発を食うまいと防御を固めるスタイルを生み、
そんな動かぬ相手にダッシュ、空ジャンプからの投げで対抗。
さらにダッシュ投げを喰らわぬようリーチの長い中突きで押す。
またそして突きの剣先を判定の強い蹴りで潰す、
といったような独自の駆け引きを成り立たせたのです。

また地上の対空技が弱く、強斬りで潰されたら終了してしまうため、
次第に相手が跳んだらこちらも跳んで空中戦というのが主流になり、
これがまた図らずもか飛び上がって斬り合う
忍者映画のワンシーンのようで実に爽快でした。

武器格闘というジャンルの礎となったサムスピですが、
ただ武器を持っただけというような同タイプゲーとは全く異質なのです。
未だにサムスピは初代が最高傑作との声が強いのはそのインパクトが
あまりに強烈だったためでもあるでしょう。

ま、実際自分も初代が最高だと思ってるクチだけどね。

PICKUP侍

ナコルル

決め台詞

大自然のおしおきよ！

サムスピのインパクトとして、ナコルルというキャラは外せない。
初プレイ時は誰もが思ったはずだ。

え!? こんな可憐な少女が人斬るの!?
というかオレ斬って良いの!?

餓狼２の不知火舞が生み出したブームにより始まった、
格ゲーの女性キャラは露出が高くて当然！そして胸が揺れて当然！
といった風潮にSNK自ら鉄槌を下す露出なし清純派りぼん鷹少女！

これを待っていた！

漢達の魂の叫びが露出のインフレを打ち砕き！ナコルルブームを創り上げた！
ただのナコファンに加え2Pの紫ナコルルにまで固有のファンが付くという異常事態！
さらに盛り上がったのがそのあまりに可愛らしいボイスだ！
この声優は何者だ！？との声が広がり、
格ゲー声優ブームまで巻き起こしてしまった。恐ろしい子！
オプションの鷹（ママハハ）を利用した技が新鮮で、使っても楽しいキャラだった。

ある漢は「肉は斬れるのになぜ服は斬れぬ！」と猛り狂い、
またある漢はエンディングで生足を見れると知るや無尽蔵に金をつぎ込んだナコ。
こんなキャラを何の違和感もなく溶け込ませたSNKの手腕にはスゲェ（生唾）の一言だ。

koya画伯

しかしこのナコ、実は初代から真の間で性格が一変しており、
初代では「おしおきよ！」の語尾からも解るように割と元気で明るい。
（真からは「～です……」）

勝利メッセージでも、

「女の子に手をあげたあなたがわるいのよ。精神修行もしっかりね」

や、

「強さも、美しさも、私の勝ちというわけね」

などとのたまっており、わりと黒い。

彼女は劇的な自然を愛する儚げ悲劇的少女化ぶりが定着したことで、
その透明感溢れる清楚なイメージにより水道局のポスターに抜擢される等、
今日の、格ゲーファン以外の一般層にまで及ぶ
一種異質な浸透度となっているのはご存知の通りだが、
この黒歴史はどうしたものか。

一応、過酷な宿命が彼女を変えたというオフィシャル解答があるにはあるのだが、
僕らは彼女の女優ぶりに騙されているのかも知れない……
女なんて、みんなそうさ……

しかしどうもナコの儚げ少女化は真が出る以前からすでに
オフィシャルサイドストーリーやファン活動で少しずつ行われていたような記憶がある。
よって真サムでナコの性格が変わっていても、違和感を感じなかった人も多いはずだ。
というか実は王虎の変わり様のほうがすごいのだが、
こちらは逆の意味で違和感がなかった（どうでもよかった）。

また、この初代サムスピではこんなナコをも両断が可能で、
今ナコの手首等が身体から離れ、飛んで行く様を見せられると
気分が悪くなってしまう人もいるかも……？
過激な演出も魅力のひとつだったとはいえ良心の呵責に耐え切れなかったのか、
さすがに斬サムからは斬れなくなったのでした。
（と思ったら零SPで縦に割れたり首が飛んだりしてる((((;゜Д°)))）

最後にこれは余談になるものの、前述の水道局（三鷹市）ポスターは
今ではアニメキャラを毎年起用し、そっち方面へと爆進しているらしいが、
これはナコルル起用が思い掛けず大きな話題となり、大成功となった影響らしい。

当時はもの凄い勢いでこのポスターが盗まれたとか……
一体何人の漢の人生を狂わせれば気が済むのか！
……すごい漢女（おとめ）だ。

空耳スピリッツ

▼アイヌ娘！

自己紹介に余念がない。

名無し改画伯

お気に入り度
あたたたたたた

対戦
バランス	Ｂ
空気	Ｂ

ダッシュからレバーを入れたまま直接投げられないので待ちを崩すのが困難だが、その分またジッと待って間合いを取り合う緊張感がある。

もう一つハマりくさい対リーチの長い突きキャラだが、その場合、蹴りが役に立ち、間合いを調節しながら判定の強い蹴りで潰したり転ばせるのが有効だ。
リターンを考えなければ蹴りの方が判定的に強いというのが面白い。空中戦もキャラにもよるが蹴りが競り勝つ場合が多い。

もしくは別に削られるわけではないので亀になって動かない、といった選択肢もある。
突きをガードしていたら当然間合いは離れていくので相手側は自然、一歩踏み込む必要性が生まれるのだが、そのタイミングで大斬り！！

と、これが初代の対戦である。

他にも登りツバメやタムタムのバックジャンプ強斬りが中段になったり、またタムタム等、ゴリゴリ削れる技を持っているキャラも存在。半蔵ガルフォードのコマンド投げはダッシュから直接投げられるし、アースクェイクは投げられない等、前述の突きキャラ、一発キャラも加えてそれぞれの性能がバラエティに富んでいるのが面白い。
待ちが強いのは事実だが、決してただガードで固まるだけのゲームではないのである。

理解のある者同士の対戦は息の詰まる、最初にして最高のサムスピを見せてくれるだろう。
惜しむらくは、家庭用だけでもタイムを無制限に出来ればもっと良かったのだが。

CPU戦

Ｂ

強い。超反応がどうたらこうたらではなく、メストムックによると攻めアルゴリズムと防御アルゴリズムを使い分けているらしく、行動が的確で強い。

だが、サムスピの場合はその方が面白いのだ。木人形を相手に大斬りを叩き込んでも全く面白味がない。
硬いガードをこじあけて掻っ捌くのが快感なのである。

闇雲に大技を振り回すのではなく、小技中技で牽制して跳んで来たらジャンプ大斬りで撃墜。
ズビャ！という血塗れの斬音と共に長いヒットストップ。
そして「勝負あり！」
一人目からすでにある程度強いので初っ端から真剣勝負。
後のサムスピのCPU戦が面白くないので余計に面白く感じる。

ただし本当に強いので慣れないとクリアは難しい。クリアを全てと考えるならＣ評価だろう。
あとシャルと幻庵のインチキ投げっぷりは普通に怒り頂点。
奴等…… 許さん……！