PROLOGUE
冥界よりの使者
前作の流れ作業のようなそれとはうって変わった妙におどろおどろしいサブタイトル。
妖怪等が普通に出て来そうだ。
サウスタウン――
ゴミ箱を漁り残飯を喰らう野良犬の頭にいきなり
棒が刺さる。
早速のスプラッタシーンだ。
棒の持ち主は当然ビリー・カーンだった。
ギースの死によってすっかりやさぐれた彼はボロボロになったバンダナをかぶり、
酔っ払いながら夜の街をフラフラしていた。
このバンダナのやぶれた部分から
肌が露出しているところから見るに、
ボンボンビリーはやはり間違いなくファンに媚びず、
スキンヘッドである。
そこに現れるヒゲの男。
「荒れてるな ビリー」
突然現れたヒゲ男に軽く挑発されたビリーは一瞬で理性を失い、
「死にてえか!?」と男を棒で突いた。しかし指一本で止められるビリーの棒。
「いまのおまえに殺れるのは野良犬くらいだ」
いつから見ていたのか皮肉の利いたセリフを吐くヒゲの男の名は、ローレンス・ブラッド。
「わたしとともにこい おまえの仕える新たなる主のもとへ……」
テリーともう一度闘うチャンスを与える。
ローレンスの言葉にビリーの瞳は再び輝きを取り戻しつつあった。
尚、このマンガには妹、リリィの存在は
恐らく無いので、
兄がやさぐれた後のリリィの生活を心配したファンは安心して欲しい。
ジョーの毒牙にかかることもないので、安心して欲しい。
場所は変わってサウスタウン郊外。
そこにはジャンバーの袖が破れ、より一層ワイルドになったテリーがダックと共に歩いていた。
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が、靴はプロレスのまま。
そこを衣替えしろよ!! |
ジーンズも前作に引き続いてのピチピチっぷりで、
一番変更しなくてはならないはずの下半身はなんら変更がなかった。
というかそもそも
Gパンなのか? これ。
ふと、そこに現れる黒い影……!
「あ……あ あいつら…… あいつらは〜っ!?」
ダックお得意の思わせぶりな引きで舞台は変わって日本、奥飛騨。
アンディが教えを受けたと語る師匠、不知火半蔵に会うためにアンディとジョーが歩いている。
前作ではアンディは自己流で技を磨いたことになっていた
はずだが。
そこは人気のない山中ではあるものの、ジョーは自慢の黒マントを着用している。
山中を歩く際に枝木等で肌を傷つけないための処置とも考えられるが、下は
裸足である。
尚、舞達が住んでいた不知火半蔵の家は
舞ステージのある富士の青木ヶ原だったと思われるのだが、
今作ではどこから出てきたのか奥飛騨ということになっているらしい。
しかしこの問題はアニメ版で飛騨の
『不知火の里』なるものが生まれると、
いつの間にやらそれがオフィシャルにも出て来るようになったのでよく解らないところだ。
原作がいい加減ならマンガもいい加減である。
と、そこに飛んで来る扇子一閃! 飛び掛ってくる黒い影!
また黒い影!
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ドラゴンボールさながらに空中で激しくぶつかり合う両者!
(どういう動きだ?)
このシルエットは…… そう! |
紅一点、不知火舞登場!
意外にも可愛く描かれていて驚きだが、かなり無理をしていたようで
途中でツリ目のモロくの一顔になったかと思えば、高橋留美子顔になったり、
そして最終的には結局いつもの
ボンボン顔に落ち着くという安定感の無さを見せた。
ジョーが
「ボイーンだ!」と騒ぐ中、双方の自己紹介が行われる。
不知火半蔵の孫の不知火舞と、ムエタイチャンプの東・丈。
そんな和やかなムードの中でふと上を見上げると……
なんじゃこりゃあああ〜〜ッッ!!
なんだきさまらぁ――っ!?
あのギース親衛隊がノーマルにすら思えるこの怪しさ!!
上を見上げただけでこんな連中に囲まれていては
さすがのアンディ達も絶叫を禁じ得ないところだろう。
問答無用で襲いかかって来る奇妙な仮面(あと変な帽子)の男達!
「われらはだまってやられんぞ!!」とアンディはやる気まんまんだ!
マントを脱ぎ捨てて肌を晒すジョー! 必殺忍蜂で突進する舞!!
ジョーが便利な爆烈拳で周囲の敵を一掃し、そしてアンディに目をやると……
なんだこのシュールな絵は……
ピエロの出来そこないのような男が逆立ちをしている様を目元を黒くしてジッと見つめるアンディ。
かつてこれほどまでに圧倒的な沈黙の表現を私はマンガで見たことがない。
逆立ち状態から鋭い蹴りを繰り出す仮面の男にジョーは見覚えを感じた。
「まさか!? まさかーっ!?」
即刻アンディと逆立ち仮面の間に割って入り、実際に蹴りを受けるジョー。
この技は間違いなくあの……っ!!
ハリケーンアッパーッ!!
木に叩き付けられ、外れ落ちる仮面。その正体は……
「……やはり…… やはりこいつは……
リチャードは前作でギースに消されたはず!
「どういうことだ!!」と激しく狼狽するアンディだが、
察しが付いていたにも関わらず、容赦なくハリケーンを浴びせるジョーもどういうことなのだろうか。
尚、今作では結局、不知火半蔵が出て来ることは
無かった。
再び舞台は戻ってサウスタウン郊外。
先の引きから続いてまだ
「あ……あ…… あいつら あいつらは……!?」と、
同じ単語をうわ言のように繰り返しているダック、そしてテリーの前に現れたのは……
「マイケル・マックス! ホア・ジャイ!!」
またしても死んだはずの漢達が復活!
いわゆる、その辺の石コロよりも頭蓋骨が柔らかいコンビである。
二人が生きていたことに驚くダックだが、
彼も前作のラストで
ほぼ死体だったことを忘れてはならない。
質問をしてみると、
「たしかにわれらは一度死んだ……
だが……われらの新たなる主が二度目の命を与えてくれた……」
などと
なかなか無茶なことを言い出すマイケル・マックス。
テリーは
「ヒャホーッ」と言いながら襲い掛かって来るホア・ジャイを迎撃し、
倒して吐かせようという結論を導き出した。テリーvsホア・ジャイ再びである。
互角の殴り合いを繰り広げる両者。
ギースを圧倒し、そして殴られてもダメージを受けない体質になったはずのテリーが、
なぜ
ホア・ジャイなどと互角に殴り合っているのか?
そこに
当たり前のように刃のついたグローブで戦闘態勢に入るマイケル・マックス。
彼は
ズン ズンとずんずん教の野望(セガ)のような効果音を鳴らしながら歩を進め、
未だにホアと互角の殴り合いを演じているテリーを背後から斬り付けた。
「おまえの血をとれ それがご主人さまの命令だ」
動揺してホア・ジャイのラッシュを喰らい、グロッキーとなるテリー。
どうやら冒頭にしてすでに殴られるとパワーアップするという設定は
無くなったようだ。
ホア・ジャイに羽交い絞めにされ、刃付きのグローブで心臓を狙われるテリー。
しかしそこにカットに入ったのは一応ファイターの端くれたるダック・キングだった!
チャンス!!
パワーエルボーッ!!
もう出た! ボンボン奥義ッ!!
テリーの技だからと言って何にでも『
パワー』を付ければ良いってもんじゃないんだよ!
と、声を大にして言いたかったが後に本家でも
『
パワーダンク』『
パワーチャージ』、KOFでは『
パワードライブ』『
パワーシュート』なる
安直なネーミングの技が追加されている手前、このボンボン奥義を虐げることは出来まい。
むしろ、このパワーエルボーが本家に与えた影響が気になるところだ。
そしてマイケル・マックスには……
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ライジングアッパーッ!!
リンかけ並の避け攻撃!!
避け攻撃を持ってくるとはなかなか渋くて良いぞ!
ボンボン餓狼!! |
見事二人を沈めたテリーだったが、その胸の中は言い知れぬ嫌な予感に支配されていた。
その様子を高台から見下ろす一人の男、
もみあげと顎ヒゲが繋がったその姿はビリーも視察していた、あのローレンス・ブラッド……!
「……ちっ なんかいやな予感がすんなあ……」
尚、私は古本屋でこの本を発見したときからすでにいやな予感がしていた。