DEATH-TINY 6
影たちの輪舞
韓国 慶州
今ではあまり見なくなった田舎景色の中に建てられた一軒の道場。
看板には「テコンドー」と漢字で書いてある。
テリー達はアクセル・ホークの言葉を信じ、キムの道場へと辿り着いていた。
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あのバーンナックルハリケーンで壮絶に散ったキムのダメージは
そうそう簡単に回復できるようなものではない。
本来なら重傷状態であるはずのキムが、
本当にここにいるのだろうか? |
疑問の答えはこの道場の中にある。
テリー達は意を決して道場内に歩みを進めた。
すると肌に響いて来るような達人特有の気配が……
いる!
「やつは―― キム・カッファンはこの中にいる!!」
キムがいると思われる扉の前で
絶叫するテリー。
さしものキムもこれには中でビクッとしたであろう。
テリーの先制パンチである。
しかし以前に闘ったときの気配とは何か違う……?
あのときよりもさらに迫力がある。静かだが、比較にならないほどの強い闘気を感じる。
中にいるのは本当にキムなのか?
その答えも、やはり突入した先にしかなかった。
パオパオカフェでもそうしたように
扉を蹴破って中に入るテリー。
「ずいぶん……」
「乱暴ですね」
仰る通り。
キムだ! キムだ! と大騒ぎするダックだが、テリーはこの男が別人に思えてならなかった。
疑問と焦りが交錯し、再び絶叫を上げるテリー。
「いったいてめぇはなにモンだ――――っ!?」
というかさ、
明らかに顔違うよ。
ねぇ、みんな気付こうよ、顔違うから……
しかもニセ者のほうがハンサムで、本物は
大悪党のツラですね。
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「失礼ですね あなたは……
道場の扉をけやぶり 人をてめぇよばわりするとは……
まるで知性をかんじませんよ」 |
仰る通り。
何か先のアクセル戦からテリーが無茶をする度に、
敵にたしなめられているような気がする。
ボンボンテリーの数限りない蛮行は作者様的には確信犯なのだろうか?
しかしこの男はテリーの名を知っており、そしてキム・カッファンと名乗った。
このキムと、あのサウスタウンで闘ったキムとの関係は?
キム・カッファンという男は一体何者なのか?一体どちらがコスプレなのか?
キムは静かに語り始めた。
「あなた方とサウスタウンで出会い そして倒されたキム……
あれはわたしの……"影" ……です!」
影!? キムにはあの獅子王のように影武者がいるのか!?
でもあんなに顔が違ったら
全く意味がないと思う。
そしてさらに、ここにはこんな方々もいる、とキムの合図でその背後に二つの影。
そこに現れたのは……
パンツ オブ ジョー! そしてさらわれた
アンディ!?
アクセルの言葉通り、アンディはここ、韓国にいたのか!?
驚きの表情のテリーとは違い、目に涙を浮かべ顔をほころばせる舞。
アンディにやっと会えた!
喜びで胸がいっぱいになった舞は影キム如きに一方的に敗れ、
ここにいるはずのないジョーの矛盾は軽く無視し、アンディの胸に飛び込んだ!
飛び込もうとした! ……しかし次の瞬間!
舞は
ビンタではたき落とされていた。
咄嗟に前へ出るテリーだったがさらにその前に今度はジョーが立ちはだかり、
そして右ストレートォ! 痛い!!
この瞬間、テリーははっきりと認識した。
「こいつらは…… 敵だ!」
外見は明らかにアンディとジョー。
しかし違うのか?コスプレなのか?
いや、記憶を辿れば以前にも同じようなことがあった。
そう、
ギースの催眠術である。
そこに気付いたダックは二人が操られているのでは?
との疑問を投げかけるが、テリーの答えはNO!
「もしやつらがほんとうにあの二人なら
たとえ術であやつられようとおれたちにむかって」
「あんな殺気をはなつわきゃね―――っ!!」
?
餓狼伝説1 2巻 第9話より
もっとすごいの放ってた。
殺気っていうかもう、殺られかけてる。
…………
サウスタウンで倒したはずのキム。
ヴォルフガング城の地下に現れた、テリー達のニセ者。
そして今、目の前にいる敵となったアンディ、ジョー。
この壮大な謎を、キムは語り出した。
彼らは皆……
"複製(クローン)人間"なのです!
ゲェー!!
"複製(クローン)人間"なのです!
ゲェー!!
あの多くのNEOGEOファンを萎ゑさせたKOF'99のルーツ!
そして格ゲー最大の謎にしてタブーである同キャラ対戦の謎は
全てこのボンボン餓狼に隠されていたんだ!!
ゲェー!!
飛燕斬追撃、ラウンドウェイブ等、度々見られたボンボン奥義オフィシャル化現象だが、
どうやら設定までもオフィシャル化していたようだ。
どうも'99以降、KOFにうさんくさい面々が増え続けていると思ったら、
それは
ボンボンテイストが加味されたためだったのだろう。
我々はここに気が付くべきだった。
そう、
近年のKOFはボンボンなのである。
そう考えれば納得が行くし、再び愛せるだろう。
近年のKOFはボンボンなのだ。
クラウザーの計画はKOF出場者のクローン軍団を作り、表と裏の世界を統一することだった。
恐るべきシュトロハイム家の科学力。
AからB、BからCと、無限に形態も機能も寸分違わぬ同一人物を作り出せるとキムは語った。
ご自分の形態は違いすぎのようですが。
さらにビリーと闘ったあのニセテリーのように、
最強の狼、テリー・ボガードのクローンもすでに、しかも改良を加えられ、
本物に勝る実力に鍛え上げられ完成していた。
いつの間におれの遺伝子を!? と驚くテリー。そして、
「あなたのように闘うたびに血をながしていてはそのチャンスはいくらでもありますよ」と、キム。
確かにこのマンガは少々のことで
血が噴き出しすぎだ。
遺伝子を採取するのも容易いだろう。
偶然にもテリー、舞、ダックとクローン3体で3対3。
キムは高見の見物を決め込み、テリーvsテリー、因縁の舞vsアンディ、
そして
残り物のダックvsジョーの3カードが封切られた。
しかし所詮はクローンなのか、テリーは当然、舞とダックにも押されるクローン勢。
ジョークローンなどは
スウェーキックを
「スエーキーック!!」などと絶叫し、
プリティーを
プリチー、
ディスコを
デスコとしか言えないおじさんのような体たらくだ。
だが、そこが油断を誘った!
その直後!
クローンジョーは無表情に立ち上がり背後から冷たい瞳でダックを見下ろすと、
浮かれるダックに超必殺技を放った!!
「スクリューアッパーッ!!」
ぎゃああーっ!!
そして彼はまた、
ほとんど死体となった。
これで堰を切ったように優勢になるクローン勢。
どうやら
強いて言えばムードメーカーのダックが、
ムードを悪くしてしまったようだ。
その頃、韓国 金浦(キンポ)空港……
「アテンションプリーズ アテンションプリーズ」というアナウンスが鳴り響く中、
今再び、伝説の漢達が帰って来た……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ズ――――――ンッ!!
役者は、揃った。
DEATH-TINY 7
誇りの一撃
連続写真のようなジョーのシュールな横顔、そして後ろ姿に目を奪われがちだが、
ジョーはこの裸マント姿で飛行機に乗ったのだろうか?
その謎を解明すべく記憶を振り絞ったところ、
実は以前、私は裸族が来日する企画番組を見たことがあった。
その番組では確か彼らもジョーのように最低限の布は纏ってはいたが、
ほぼ裸で飛行機に乗っていたはずなのだ。
ならばジョーの裸マントとてさしたる問題はないだろう。
むしろパスポート等がどこに収納されているのかが問題だ。中か。
というよりも、問題としては
舞のほうが遥かに深刻ということに
我々はもっと目を向けるべきであろう。
裸マントの謎など正直どうでもいいというのが、偽らざる私の本心である。
いずれにせよ、堂々と日の丸のハチマキを巻いて
韓国を闊歩するジョーは日本男児の鏡と言えるだろう。
一方、キムの道場。
テリーとクローンテリーがバーンナックルを打ち合っていたが、
テリーの拳は当たらず、本物はクローンに打ち負けていた。
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「う…… ぎゃああーっ!!
ごが ごががあっ
い いてぇぇーっ! おぐ おぐう」 |
と、文字通り
のた打ち回るテリー。
ダックと舞もトドメを刺され、もはや本物軍団の命運は風前の灯となった。
「サニーパンチ!」「スピンキック!」とさらにクローンテリーの猛攻を受ける生テリー。
そして必殺のぉ……
クラックシュートォッ!!
を背中に喰らい、本物またしてもダウン!
そして言うまでもなく、
クローンもプロレスシューズだった。
もはや勝負あったか。ほくそ笑むクローン軍団。
しかし、キムだけはテリーが立ち上がることを見抜いていた。
キムの予言通り、起き上がれるはずのないダメージを受けながらも
ゆっくりと立ち上がって来る生テリー。
本物のタフさに焦りの色を浮かべ、クローンテリーはさらに激しく拳を浴びせた。
これも以前に見た光景だ。
テリーvsギース、餓狼1最終決戦。
もしや
攻撃を吸収する鋼霊身の設定が甦ったのだろうか?
微妙に
シナリオがループしているようにも感じる。
一方的にクローンの攻撃を受けていたテリーだが、
攻め疲れで技が鈍くなった隙を突き、ついにパンチを躱した。
笑みを浮かべ、拳を握りしめる本物テリー!
しかし!
「はなれろ!!」
……浅かった。
生テリーがカウンターで繰り出したとてつもなく重いアッパーは、
キムの声に反応したクローンが身を引いたことによってダメージを軽減されてしまったのである。
だが、それでもクローンテリーの足下はフラついていた。
弱っているはずの生テリーになぜこんな力が……?
やはり
死語になりつつある鋼霊身か?
「どういうことだキム?」と
タメ口でキムに訪ねるクローンアンディ。
キムが語るに、あれはクローンテリーを作ったときに使った遺伝子にはインプットされていない、
生テリーが今、即席で思い付いた闘い方ゆえクローンでは理解出来ない戦法で、
ぶっちゃけ格闘マンガでよくあるパンチ、キックに逆に踏み込んで
手足が伸びきらない間に受けることによって威力を半減させるという裏技だったらしい。
ハッキリ言って
なんのことはない戦法だ。
遺伝子がどうのこうのなど
全く問題ではないと思うのだが、これは素人考えだろうか?
そもそもクローンはただ同じ存在を形作るというだけで記憶は引き継げないはずなのだが、
シュトロハイムクローンは記憶もコピー出来るのだろうか?
ならば、と倒れた生テリーに蹴りの連打を浴びせるクローンテリー。
確かに倒れていては踏み込んで威力を半減させることは出来ない。
これにはさすがの生テリーも堪えたようで、とうとうダメージが深刻になって来た。
やはりクローンテリーの実力は本物に勝っているのか?
尚もエゲツなくダウン攻撃を行うクローン! 万事休す!?
だが、その時!!
背後から
ガゴォッという轟音鳴り響く打撃がクローンテリーの後頭部に叩き込まれた!
ダック・キング
変身途中のウルトラセブンのようだが仮にもサウスタウンで鳴らした男。
死体に等しい状態になっていたダックのカットが生テリーの窮地を救ったのだ!
「オレの命はテリーがひろってくれた…… そのテリーをオ(以下略)」
そのダックを始末しようと前に出るクローンアンディに今度は花蝶扇が炸裂!
ダックに続いて舞も復活! ムードメーカーの面目躍如か、再び本物勢に流れが来た!!
尚、何気ない花蝶扇だったのだが以後クローンアンディが出て来ることは無かったため、
どうやらこれで
彼は終わったようだ。
腹に扇子が当たっただけなのに……
ノーガードで殴り合い、顔中を血だらけにして何度も這いつくばりながらも
実は効いていなかったと立ち上がり、また出血しながら殴り合うこのマンガにおいて
異例の打たれ弱さだったと言えるだろう。
しかし本物チームも満身創痍には違いなく、
すぐさま
「こ娘ぇーっ!!」と
白目を剥いて襲い掛かったクローンジョーの
助走の付いた
ラリアットによって舞は結局KO。
助けに入ろうとしたダックも
「てめぇはオレだーっ!!」とクローンテリーに捕まり、
思い切り殴り飛ばされた。
再び死体と化し、5mほど空を飛ぶダック。
彼が辿り着いた先には…… 黒い…… 黒い…… そして懐かしく頼もしいあのマントの感触が……!!
「どうしたダック ずいぶんはでにやられてるな」
ジョ――――ッ!?
みんな待ってた!
大ピンチについにジョー・男前・東到着ッッ!!
本物軍団にここへ来て、大きな戦力がプラスされたッッ!!
すっかり息を吹き返し、
「うは うははぁ ジョーッ」
と、大喜びのダック。
なにやらジョーはダックの「韓国へとぶ」という手紙でここへやって来たらしい。
自分が二人いるという異様な光景の説明を受けるジョー。
「そりゃめいわくな話だな おれのような実力者は二人といらんよ」
確かに彼のような露出狂が二人もいては社会的に迷惑この上ない。
ジョーvsジョー、禁断のカードの幕開けだ。
しかし、冷静に考えれば本物よりも遥かに力が劣るはずのクローンキムに
いとも容易くヤラれた生ジョーが果たして役に立つのだろうか?
その答えは、わずか1コマで出された。
ど、どっちだ!?
この天井に突き刺さって血をダラダラ流してるのはどっちだ!!?
と、思われるだろうが、繋がりはこうだ。
いきなりスクリューアッパー。天井に突き刺さるパンツ男。そしてダックが絶叫。
「強ぇーっ クローン丈が―――」
「相手になんねぇーっ!!」
ジョー・男前・ヒガシ完全復活!!
ボンボン餓狼1の、あのひたすらに強かったジョーが帰って来た!!
クローンアンディのショボ死によりテリー以外のクローンの強さは眉唾だが、
一応、かつてのジョーに近い、あるいはそれ以上の実力を持っていたはずのクローンジョーを瞬殺。
これは、強い。
いくらクローンキムにヤラれたと言っても、クローンキムは本当に強く、
冷静さを欠いていたとはいえあのテリーですら苦戦していたのは事実。
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ギース戦で確変を起こし、
攻撃吸収能力を失ってやや弱体化はしたものの、
主人公3人の中で少しだけ実力的に抜けた感のあるテリーがである。
ならば、ジョーが敗れたとて致し方なしといったところだろう。
キムクローンに技を知られ、見切られてしまっていた以上、
ジョーのように決まった格闘スタイルを持っている格闘家よりも、
臨機応変にアドリブが効く
テリーのケンカ殺法要素のほうが有効だったとも考えられる。
そもそもテリーvsジョー・キリングマシーン・東の対戦時は
むしろジョーがテリーを押していたのだ。 |
ここで際立つのは確実にクローンキムより強く、
立場的にクローンテリーよりも強いであろう生キムの圧倒的な強さ。
そしてわずかの差だったはずのかつてのジョーと生テリーの力関係において、
その旧ジョーに近い実力のクローンジョーを瞬殺した今のジョーの強さだ。
計算的にどうも今のジョーは
テリーより遥かに強くなっている。
その圧倒的な強さにあの超・実力者かつ沈着冷静なキムでさえ、
この驚きようだ。
この河童と見紛わんばかりの激しい形相、
ただ事ではない。
いったい病院で寝ていただけのはずのジョーに何が起こったのだろうか?
一回死んであの世で修行でも積んで来たのだろうか?
医療ミスで放射能でも浴びたのだろうか?
彼の説明はこうである。
「その男のおかげさ
その男…… キムのクローンにやられ病院でじっくりと休んだ……
おかげで体力をたくわえたっぷりとイメージトレーニングをつむことができた
強くなるには休養も必要だとおしえられたよ」
…………?
失礼、意味が
よく解りませんでした。
よく解らないが
イメトレで圧倒的に強くなったジョーの相手となり得るのは
もはやこの場には本物のキム・カッファンのみ!
生テリーを散々痛めつけたクローンテリーを見ても
「おまえのクローンもオレがかたづけようか?」と余裕のコメントだ。
そして実際、簡単に倒せるだろう。
しかし不利な状況を悟ったクローンテリーは意外な行動に出た!
彼は地面を激しく蹴り、舞の元へ駆け寄ると首に手をかけ人質としたのである!
「オレは死にたかねぇ!! 生きるためならなんでもやるさ!!」
これにはキムでさえ難色を示し、
「あまりにみぐるしい」とコメント。
テリーは自分のクローンの行いに、
「おれは死んでもそんな手はつかわねぇぞ!!」
と、怒り狂ったが、
どうだろう。
以前のキムの口振りからするとシュトロハイムクローンでは
遺伝子採取当時の生テリーにインプットされていなかった行動はクローンは理解出来ず、
再現も出来ないらしいので
生テリーも黒と考えるのが妥当である。
というか、
黒だろう。
しかし、人質として利用されるくらいならと自ら舌を噛み切ろうとする
舞の武闘家としての覚悟を見せられたクローンテリーは人質策が無駄と悟り、
やけくそに最後の特攻を仕掛けた。
「くっああーっ おれはやられねぇ!! やられねぇぞォォッ!!!」
「この…… 大ばか野郎――――っ!!」
パワーゲイザースペシャル!!!
この破壊力! そして
胡散臭さ! 即席ぶり!!
おそらく時勢はすでに餓狼2ではなくスペシャルだったために
凄いゲイザーとして語尾に
なんとなく「スペシャル」を付けてみたのだろう。
このボンボン奥義の威力はかつてないほどに凄まじく、
クローンテリーと共にキムの道場をも破壊してしまった。
キムからしてみれば
ヨソでやれ、といった感じだろう。
裸族の邂逅。さり気なく舞の肩に手をまわすジョー。
誇り(プライド)だ
堂々と闘うことを常としてきた本物(おとこ)の
誇り(プライド)が限界を
超えさせた……
クローンでは本物の持つ潜在能力は超えられない!
キムに、クラウザーにそれを思い知らしめ、残る敵はただひとり!
強敵、キム・カッファンただひとりのみとなった!!
しかし不敵に笑うキム・カッファン!!
「だがわたしもクローンではない "強い"ですよ」
果たして生キムは一体どこまで強いのだろうか!!?