「やぁ!餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ」
「よう! KOFの主人公にしてSNKブランドを背負って立つ男、京サマこと草薙京だ!
こっちはユキ! まぁ一応、俺の彼女ってヤツかな。
今日は盛り上がって行こうぜ!!」
「あ、はい。どうも。ユキです。よろしくお願いします」
「…………」
「右京さんだ! サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだぜ!」
「ああ、サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」
「その通りだ!」
「…………」
「……京、何だ、そのテンションは?
貴様のせいで統率が乱れている。それくらいは敏感に察しろ」
「何だよ、かてぇこと言うなよ、八神。
皆様のご愛顧もあって今回でめでたく美形会議も8回目を迎えたことだし、
ちょっとくらいハメ外したって良いじゃねぇか」
「確かに8回目を迎えたのはめでたいかも知れんが……
数字的に別段キリが良いわけでもないだろう。
それになぜ彼女連れなんだ?」
「んだよ、うるっせぇなぁ。良いじゃねぇか、8回目なんだからよ。
ったく、ケツの穴のちっせぇ男だぜ。なぁユキ?」
「え? え、ええ……」
「……空気読め!」
「あ、は、はい! お邪魔でしたら、帰ります、私……」
「あはは、なに言ってんだよ。らしくねぇぞ、ユキ。
大丈夫だって。こいつらちょっと俺達のこと妬いてんだよ」
「そういうことを言っているのではない。
俺は部外秘の場所に民間人をおいそれと連れて来るべきではないと言っているのだ。
以前ここでは盗聴事件が起こったという苦い記憶もある。
俺達は仲間同士で疑り合うあの悲劇を二度と繰り返したくはないと思っている」
「え? 部外秘なんだ、これ。初耳だぞ、俺は」
「あの、どっちでも良いから早く会議を始めたいのだけど、良いかな?」
「どっちでも良いのか!?」
「それより、ロバートはまだなのかよ?
俺もう待ちくたびれてんだけどさ」
「……ああ、ロバートさんね」
「むぅ、確かに遅いな」
「おい、まだかよ? 電話したら自家用ジェットとかですぐに着くんじゃねぇの?」
「いや、もうロバートさんは呼んでいないんだ。
彼はもう美形キャラではないからね」
「何?」
「何だと!? どういうことだ、てめぇ!!」
「どうもこうも、聞いての通りだよ。
ロバートさんはもう美形キャラじゃない。親父キャラだ。
NBCのイラストやストーリーを見てもそれは明らかじゃないか。
ここに呼ぶ方が不自然だよ」
「……むぅ、なるほど。
貴様の意見も確かに一理あるが、その辺の解釈の違いも含めて
この会議で議論するべきではないのか?」
「そうかな? やみくもに美形キャラとしてのルールに当てはめるより、
僕は一般論を重視するべきだと思うけどね」
「確かにがんじがらめのローカルルールは時として世間との歪を生み、
拡大した文化の違いは混乱の元となるケースもある。
だがロバート・ガルシアの場合はまだそこまで大きく捉える必要はないのではないか?
一般論と言ってもまだ主観の範囲の問題だ」
「その主観の統一を美形キャラ業界という狭い範囲で行うのが危険なんだよ。
一部で統一された主観はもう主観ではない。思想だ。
強い思想のぶつかり合いは必ず争いを生む。僕はそれを避けたいんだ」
「それはそうかも知れんが……」
「ああ、うるせぇ! ざけんな! てめぇらの屁理屈なんざどうでも良いんだよ!!
ロバートがいねぇ美形会議に何の意味があんだ!?
ロバート・ガルシアあっての美形会議だろうが! 違うってのか!ええ!?
てめぇらが今までやって来たこの会議の絆はそんなもんだったのかよ!?
そんな程度でぶっ壊れちまうようなヤワなもんだったのかよ!!」
「…………」
「…………」
「違うのか!? 黙ってねぇで何とか言えよ!!」
「…………」
「……あの、私思います。
みなさんにとって、ロバート・ガルシアさんはとても大切な人だったんだと思う。
だから、こうやって本気で意見をぶつけ合ってる。
私、すごいなって思いました。
みなさんも、ロバートさんも、心で繋がってるんだなって思いました」
「……ユキ」
「…………」
「……もう一度、会ってみませんか?
答えはどこにでも、色々な形で転がっていて、
それがいつも正しいとは限らないけれど、
もつれてしまった想いはきっと、本人に会うことでしかほどけないと思うんです」
「……どうなんだよ、アンディさんよ」
「…………」
「……生意気言ってごめんなさい。
でも、私、みなさんが本当はとても仲が良いの、京から聞いて知ってますから……
今のままじゃ、悲しいなって、思って……」
「……八神君、ロバートさんの電話番号は何番だったかな?」
「ああ、すぐに電話帳で調べよう」
「……ふっ」
「……ったく、素直じゃねぇ奴等だぜ」
「ふふ……」
「ふぅ〜! なんとか間におうたで!
ぃよっしゃ!わざわざ説明せんでもええやろうけど、
わいが極限流最強の虎ことNBCの美形キャラ、ロバート・ガルシア様や!
ほな美形会議を始めよか!」
「……おお!!」
「何だ? 俺はまだ“ら行”を開いたばかりだぞ?」
「僕もまだ電話をかけてはいない」
「いや何や、こないだのNBCのロケテストんときに
八神のズボンに発信機を付けとったんや。
んで、何や八神が会議の会場におるやないかい。
こらわいが寝坊して連絡網を聞き損なってしもたて今、慌ててフェラーリ飛ばして来たんや」
「何? そうだったのか。気が付かなかった。巧妙だな」
「巧妙や」
「まぁそんな細かい話は良いじゃねぇかよ。
せっかくベストメンバーが揃ったんだ!
俺、今日はキャビアが食いてぇな、キャビアが!
何か色々あんだろ? 超一流のキャビア定食とかさ!」
「ん? 何言うとんねや。今日は会議に来たんやさかい、料理は出ぇへんで」
「まぁたまたぁ?(笑)
そんなこと言っちゃって、あっちのカーテンの裏に雄山とか隠れてんじゃねぇの?
おーい、ゆうざーん!」
「いや、おれへんがな、そんなん。
何でわいらの世界に美味しんぼのキャラがおんねん」
「はははは!(笑)
おいユキ、からかわれてんぞ、俺達。お前からも何か言ってやれ」
「え、え? あの、えーと、初めまして、かな?」
「おお、あんたがユキちゃんかいな。名前くらいはユリちゃんから聞いて知っとるで。
何やNEOGEOポケットのSNK GALS' FIGHTERSでは大活躍やったそうやないかい」
「え、ええ。古い話ですけど、ユリさんにはお世話になりました」
「いやいや、そんな世間話は良いんだよ。
それより、えーっと、キャビアはちょっと無理って話だったっけか?
そんなら別にキャビアじゃなくても良いや。すき焼きとかしゃぶしゃぶとかさ。
あ、そうだ!しゃぶしゃぶ食いてぇな! なぁユキ!」
「いや、せやから飯は出ぇへんで。
キャビアがどうとかいう問題やなくて、会議やさかいな」
「……え? 何言ってんの?」
「何って、今言うた通りやがな」
「……マジで?」
「会議なんやから当たり前やろ。
お前、国会の中継とか観とってしゃぶしゃぶ食うとったら変やろ。
その国の行く末が心配になるやろ」
「その通りだな」
「…………」
「ほな早速、会議の方を始めよか。今日の議題は何や?
時間、ぎょうさん空けて来たよってに、今日はとことんまで話しおうたるで」
「あ、そうだ。俺達ちょっとこれから予定があったんだった。
悪りぃけど抜けるわ。代わりのゲストは真吾で良いか?
1分以内に来させるからよ」
「いや、別に呼ばなくて良いよ。
彼は美形キャラじゃないし、毎回ゲストを呼んでいるわけでもない」
「ああ、俺としては何食わぬ顔で貴様が来ていることに違和感を覚えるほどだ」
「あ、ああ、そうか。んじゃな。
帰るぞ、ユキ」
「え、ええ。あの、今日はありがとうございました」
「…………」
(いや、違うんだって、ユキ! 前はホントにツバメの巣出たんだって!
雄山もこう、こんなポーズでヘリから降りて来てだな!)
(嘘! 全然そんな雰囲気じゃなかったじゃない!
パーティーだって言うからついて来たのに! 会議って何!? どこが美形!?
私いきなり「空気読め!」とか言われたんだけど!?)
(いや、だから俺が知ってるのと何かノリが違ったんだってば!
ノリっていうかもう、ロバートなんか顔からして違ったっていうか――)
…………
「何やったんや、あの二人……?」
「気にするな。昔からよく解らん奴だ」
「まぁええわ。それよりアンディ、あー、どや?
斬影拳のキレは戻ったんかいな? みんな待っとる言うとったで」
「……いや、餓狼2レベルにまで戻すにはまだもう少しかかりそうだよ。
ロバートさんの方はどうだい?
NBCでは溜めキャラだとかいう噂だけど、上手くやって行けそうですか?」
「そいつは心配無用や。今、流行の最先端は溜めキャラやからな。
アルカディアのベストキャラクター大賞でもアッシュ・クリムゾンっちゅう輩が
溜めキャラっちゅうだけで優勝しとった。ブサ顔やのに。
NBCではさらなる溜めキャラブームの拡大を狙うて
美形キャラのわいに再び溜めキャラ枠があてがわれたんやろ。
どっちかっちゅーと、プレッシャーの方が大きいくらいや」
「……そうなんですか。それはまた大変ですね」
「あ、せや! アンディ、お前も溜めキャラになればええねん!
溜めキャラとして華麗に復活や!!」
「い、いや、それはちょっと……」
「なんでやねん。
お前も昔はよう溜めとったやないかい。真下に」
「そ、それはそういう時代だったんですよ!」
「八神、お前もこの際、溜めキャラデビューしてみたらどや?
↓溜め\→で八稚女」
「……勘弁してくれ」
「べ、別に僕のコマンドを持ち出すことはないでしょう!?
八神君もそこまで嫌かい!?」
「右京さんもどないでっか?
空中で↓溜め\→でツバメ返し」
「……無理」
「だから何で僕のコマンドなんですか!」
「ハハハハハハ」
「……ふっ」
「まったく、ロバートさんはいつもこうですよ。フフフフ」
「こら傑作や、ハハハハ」
「アハハハハハハハハ」
「……ふふっ」
「ん? あれ? 八神君はどこへ行ったんだい?」
「何や、またサボリかいな?
PLAYMOREの人に聞いたんやけど、どうも八神はサボリ癖があるみたいやで。
収録半ばにしてしょっちゅう行方をくらましよってからに、
問い詰めても部外秘やからとか悲劇を繰り返さんためやとか
わけわからんこと言うて口ぃ閉ざすそうなんや」
「やれやれ、一度ついたサボリ癖はなかなか直らないからね。
性根がだらけ切ってるんだよ。
彼も山に篭って心身を鍛え直した方が良いんじゃないのかい?
小足払いのキレが'95に戻るまで」
「せやな、今度のロケテんときに正座させて言うとくわ」
「…………」
「ほな、これからどないしょか?
八神抜きで会議っちゅうのも締まりがないしな」
「もう、お開きにしますか?」
「せや、何や誰かしゃぶしゃぶ食いたいとか言うとったな。
ほんだらこれからしゃぶしゃぶパーティや!
ええ店知っとるさかい、舌つづみを打とうやないかい」
「フフッ、それならロバートさんのNBC出演祝いに僕らが奢りますよ」
「ほんまかいな!? こない嬉しいことないわ。おおきにな。
あ…… せやったらアレや。屋台ラーメンパーティーでええわ」
「ご心配なく。しゃぶしゃぶ代くらい僕らの懐にもありますよ。
ねぇ、右京さん?」
「ガハァ!」
「血を吐いた!?」