「さてさてPS2版KOFXIで私もめでたく復帰を果たし、
ますます混迷の度合いを増して来ましたKOFヒロイン会議!
一体KOFのヒロインとは誰が担当しているのか!?
今日は再び3Dでお送りしちゃいまーす! 不知火舞です!」
「舞さん、本当に良かったですね。麻宮アテナです」
「押っ忍! ユリっチもいるよー!」
「……さて、と」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……来ないわね」
「……来ませんね」
「どうしちゃったんだろう?」
「やはり3Dだからでしょうか?
前回3Dのときはあの方、たいへんな形相をなさってましたし……」
「はは〜ん、さてはあの女、逃げたわね?」
「あの顔で再び現れるのはさすがに女優として致命傷ですからね」
「なになに? ノーメイクだったの?」
「ノーメイクと言いますか、能面でしたね」
「能面っていうか、平面だったわよ顔面が。
オマケに顔の1/3が目。鼻は米粒のようで、叩くと木魚の音がしそうだったわ」
「それ人間なの!?」
「ま、あの女はもう来ないようだし、
脱落者の事は忘れてさっさと始めちゃいましょう」
「えー でも…… いないと寂しくない?
私は途中からだけど、みんなはずっと一緒にやって来たんでしょ?」
「何言ってんのよ。せいせいしたくらいだわ♪」
「元々あの方はKOFのキャラクターではありませんからね」
「ほんとに? ほんとに良いの? 私電話してみよっか?」
「……要らないわよ。来ない方が悪いんだし」
「いつもは連絡を入れなくても電波か何かでふらっと現れますしね」
「うん…… でも、私は寂しいよ……」
「…………」
「ところでみなさん、重大発表というほどでもないのですが、
実は私、KOFヒロイン会議はもう卒業させて頂こうと思ってるんです」
「はぁ? 何言ってんの、あんた」
「えー?」
「何よ?」
「ええ、舞さん達はこんな風にピンでゲーム化されることがあるのかな? って。
ないですよね。可能性も」
「!?」
「えー うん。
道場経営シミュレーションとか…… 作ってくれないよね」
「ですよね。そこを考えると何だかKOFって世界に留まることが小さく思えて来ちゃって。
何でそんな小さな世界のヒロインにこだわってたのかな?って、
今までの自分まで小さく思えて来たんですよね」
バカ―――っ!!!!
「い、痛い! なぜ蹴られてるの私!?
しかもなぜ唐突に道路!? ここ室内じゃなかったの!? わからない! 何も!」
「そりゃあ解らないでしょうよ! 甘ったれた今のあなたにはね!」
「!?」
「あなたね! ちょっと自惚れてるんじゃないの!?
今のあなたがあるのは何のお陰!? あなたの原点は何!?
言ってみなさいよ! KOFでしょうが!」
「サ、サイコソルジャーなんですが……」
「屁理屈を言って!」
「じ、事実なんですが……」
「アテナちゃん、また一緒にやろうよ。
ナコルルさんが来なくなって、アテナちゃんまで抜けちゃったら、私……」
「これ以上…… 私をガッカリさせないで……」
「……みなさん」
「…………」
「アテナちゃん……」
「……解りました。KOFのヒロイン…… そうですね。
私にとっては取るに足らないみかんに付いた白いスジのようなタイトルですが、
ここまでずっと、みんなで頑張ってやって来たんですものね。
例え私だけが上の立場になったとしても、
みなさんと目線を揃えた過去は無意味なものではなかったはずです」
「そうだよ、アテナちゃん!」
「ですよね! ありがとうございます、舞さん、ユリさん!
私が間違っていました」
「ふふ、もうホントにバカなんだから。解れば良いのよ」
「…………」
(いや、ホントに解ってるのかしら?
何か今、言い回しが傲慢じゃなかった?)
「では、改めてKOFのヒロインを決めるヒロイン会議、始めましょう! みなさん!」
「おー☆」
「おー☆」
「おお!?」
「!?」
「ああ! ナコルルさんだ! 待ってたんだよ、私達!」
「ふ、ふん! 遅かったじゃないの」
「今日はよろしくお願いしますね」
「!? 何ですか、貴女達は!?
いつもはあの手この手で私を不当に排除しようとする貴女達が!?」
「えー? そうだっけ? 私はレギュラーメンバーだと思ってたよ」
「まぁ良いじゃないの。過去のことは、ね!」
「有り得ない!
ただ歓迎するだけでも有り得ないのに、
せっかくKOFMI2で表情パターンが増えたものだからアイコンを色々使おうという
コンセプトがありありと見える3D会議を嘲笑うかのように2Dで現れた私に
いつもの品のない非難どころかツッコミさえも入らないなんて!」
「いえいえ、別に3D限定というわけではありませんよ。
2Dあっての私達ですものね」
「うんうん!」
「そんなはずはありません!
私を蹴落とすことしか考えていない貴女達が! あの悪魔のような貴女達が!」
「…………」
「…………」
「…………」
「はっ! さては私がすでにいろはなにがしに
サムライスピリッツのヒロインポジションを奪われたと思って……
本来、ナコルル茶屋であるべきTGSの物販コーナーを
いろは茶屋にされた私を哀れんでいるのですか!?」
「…………」
「いろは湯呑みなどとわざわざ作らせているうえに
本来そこにあるべき私の湯呑みはなく、
SNK GALSバージョンからも外された私を哀れんでいるのですか!?」
「…………」
「ああ、何ということでしょう……
有り余る魅力で常に嫉妬の眼差しを浴びて来た私ではありますが、
ここまで陰湿な嫌がらせはかつて味わったことがありません……
何という酷い人達……
こんな人達がヒロイン候補だなんて、私は悲しいし、またあってはならないと思います」
「…………」
「ああ、何というかわいそうな私。
これも正ヒロインの宿命なのでしょうか……」
「…………」
「あ、また何かやってる」
「……あ、クーラちゃん。お散歩かしら?」
「これまたヒロイン会議? わたしも混ざっていいのかな?」
「うん、もちろん歓迎すムグムグ!」
(これ以上、ややこしいの増やさないの!)
「クーラちゃん、ここはお姉さん達、難しいお話してるのよね。
だから、クーラちゃんにはちょっと難しいかな?」
「えー なんで?」
「遠足気分では困りますね」
「なんで? なんで?」
「…………」
「あ、あれはお姉さん達で話し合ってなかったことになったのよね」
「なんで?」
「なんでって、男がヒロインなんておかしいでしょう?」
「えー なんで?」
「だ、だからね……」
「ねぇ なんで? なんで?」
「…………」
「ねぇ なんで?」
「この××が! ××ってやりましょうか!?」
「ちょ、ちょっと舞さん!?」
「妖刀チチウシがここまで血を欲しがったことがかつてあったでしょうか」
「ナコルルさんも!
刃物はしまってください! それ以前に持ち込まないで!」
「××××が! ××××!」
「ま、舞さん、その、子供の言うことですし……」
「そうだよ、舞ちゃん。大人気ないよ」
「この技はいろはを殺(と)るときのために取っておいたのですが……」
「ナコルルさんは妖刀をしまってください!」
「私はね! 真剣に話し合ってるのよ! この会議に懸けてるの!
私のヒロインとしての尊厳を! いいえ、それだけじゃない!
私は餓狼伝説という看板も背負ってるのよ!
私の敗北は私だけの敗北じゃない!」
「……あ……」
「負けられないのよ! 私は負けられないの!」
「……舞さん…… そこまでこの会議に……」
「あ、なんだ…… そっかそっか」
「何よ?」
「大丈夫だよ。ちゃんと手加減してあげるから」
「ブッチーン!」
「舞ちゃん落ち着いて! 普通、口で“ブッチーン!”とかは言わないよ!」
「ま、舞さん!?」
「舞うは刃か血煙か……」
「ナコルルさんも! なに着々と準備を進めてるのですか!?」
「何ですか、貴女は。儀式の邪魔をしないで下さい」
「取り止めてください!」
「だってさ、最近わたしあつかい良いんだって。
もうわたしがKOFのヒロインだってダイアナもフォクシーも言ってた」
「そりゃあアンタのシンパはそう言うでしょうよ」
「・クーラ好きだー
・くーらたん、がぁはぁ
・ハァ・・・・ハァハァ
・ロリコン
・クーラたぁああぁん! *┰(o.o(σ.σ)ノシ{バイバイ (*´∀`*)だいちゅきvvv
・クーラにクラクラ」
「ここで鶴の生き血を、と……」
「気持ち悪い! せめて外でやってください!」
「な、なんで今日、こんなに混沌としてるの!?
会議は!? みんなどうしちゃったの!?」
「だいたいね、アンタは露出が少なすぎるのよ、解る? クーラちゃん。
ヒロインの格と露出面積は比例するの。
そこへ行くとアンタなんて、ねぇ? 全然じゃない」
「えー なんで?」
「なんででもそうなの!
アテナ達にも聞いてご覧なさいよ」
「……いえ、私は別に……」
「下品なだけですね」
「どうしたの、舞ちゃん?」
「な、何言ってるのよ、アンタ達!
ジョーの優勝が露出の重要性を物語っていたのではなくて!?
何故そんなかわいそうな目で私を!?」
「裸になればいいの?」
「裸になっちゃ駄目なの! 限度を弁えなさいよ!」
「…………」
「…………」
「…………」
(……言ってることは正しいけど……)
(……舞さんが言っても説得力がない……)
「何かもう疲れた。クーラ帰る。バイバイ」
「ふぅ…… ふぅ…… やっと帰ってくれたわね……」
「…………」
「…………」
「さぁみんな、会議の続きを始めましょうか?」
「……いえ、何か私……」
「……う、うん……」
「……何よ?」
「……何か悲しくなってしまって……」
「……今日はもう、ね……
ナコルルさんが散らかしたのも片付けないといけないし……」
「……申し訳ありません。新聞紙を敷き忘れました」
「……何なのよ、アンタ達! やる気あるわけ!?」
「どなたか新聞紙をお持ちではありませんか?」
「…………」
「…………」
「その哀れみの目は何なのよ――――っ!!」