「えー!? 出るのー!?」と、ある者は驚き……
「ふーん、出るんだ」と、ある者は興味なさ気な反応を示し……
「なにそれ?」と、多くの者は存在すら知らなかった……
(あるいは忘れた、または
意図的に抹消した)
あの風雲の続編がついに世に放たれる! しかもタッグで!
ということで奇ゲーの続編としてさらなる奇ゲーを期待する声すらなく
宣伝も雑誌の特集もいい加減なモノでサラッと流されたうえに
同時期にカプコンが編み出したタッグ格闘、X-MENvsストリートファイターがヒット。
さらにSNK自らも風雲の存在を隠蔽したいのか直前にKOF'96、
直後に天サムと死のサンドイッチ攻撃を敢行したため
歴史の影のさらに影、漆黒の闇へと葬り去られた風雲スーパータッグバトル。
サンドイッチ攻撃の様子
もはやこれはゲーセンで見かけることすら珍しく、
今度はもう
入荷しているだけでゲーセンが
漢の聖地化していました。
でもコレ、色メガネをかけずに見ると
各SNK格闘のシステムを盛り込んでバランス良く消化した、
何気に面白い隠れ名作だったりするのです。
最大の変更はすでに時代遅れとなっていた、
操作感覚の悪い、ボタンを押す長さで強弱の変化を、というシステムを撤廃し、
パンチ、キック、武器の3ボタンをレバーを入れることによって
強弱使い分けるという風に設定したことでしょう。
それにより前作とは全く違った操作性、
そして全く違ったゲームへと進化させることに成功しました。
しゃがみ技やジャンプ技までレバーの有無で強弱が変わるため、
異様に通常技が多いのがこのゲームの特徴です。
そしてそれを
弱>弱>強>強>武器>強武器
と繋げる
ラッシングコンビネーション。
ともすれば作業っぽくなってしまうチェーンコンボ系のこのコンビネーションですが、
レバーを入れたり離したり
操作がややこしいために、
長いコンビネーションを繋ぐと不思議な充実感が生まれます。
当然途中でキャンセルして必殺技に繋ぐためにさらにテクニカルに。
空中から弱>武器>地上コンビネーションと繋いだり、
空中の相手にも多段でビシビシとコンビネーションを当てられるので、
その爽快感は充分にプレイヤーを引き込んでくれるでしょう。
この肝となるシステムを成功させ、
前作のどうしようもなかった固い動きを改善しただけでも良作の域なのですが、
ここに加えられるもうひとつの肝――
タイトル通りの
タッグシステムも忘れてはなりません。
風雲のタッグシステムはカプコンのvsシリーズとは違い
タッグエリアと呼ばれるゾーン内でしか交代出来ず、
さらに
一人やられてしまうともう一人が残っていても即敗北となってしまう
やたら諦めの早いルールのため場所取りが重要です。
そのタッグエリアの奪い合いをさらに熱くする、斬サムからの
回り込み。
KOFからAB同時押しの攻撃避け、
スウェー。
そして体力が減ったら何度でも連発できる超必殺技、
逆転技。
他にも斬サムから登場のBC同時押し
中段攻撃、
さらに
Aで
下段攻撃なる龍虎っぽいシステムに加え
脱衣KOなど、
密かにSNK格闘の集大成的な作品とも受け取って良いでしょう。
退廃した近未来を新しい世界観にグッと渋くなった風雲ワールドで、
体力ゲージ点滅時に“連続技専用ではない”超必殺技を狙っていると……
古き良きSNKスタイル+近代スタイルの融合に妙な懐かしさと、
そしてまた新しい爽快感を体感することが出来ます。
キャラは例のメンツですが。
風雲じゃなかったらヒットしたかも知れない不遇の名作。
こんなマイナーゲーのコマンドなんかいちいち覚えてらんねぇよ!
って人もこのゲームは分をわきまえて超必が共通コマンドなので、
労せずして入り込めるのではないでしょうか。ていうか、それ自分のことなんだけどね。
対戦のみならず、待機側は
連打で体力を回復するという
暑苦しい協力プレイも楽しいゲームでした。
風雲でさえなかったら……
PICKUP
ブーメラン |
ロサ
キム・スイル
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ポップな未来だった黙示録から一転して世界の裏を描き、
“ひたすら渋く”をコンセプトに作られた風雲STB。
狂気の前作がなぜかアジアでヒットしたらしく
(真剣に謎)、
続編の今作ではアジア系新キャラを加えるという
ワールドワイドな戦略を見ることが出来る。
渋い! 硬派! アジア!
この3つを完璧なまでに表現しているこの二人、ロサとキム・スイル。
タイトルは風雲〜だが風雲拳ハヤテを退けて主人公扱いだ。
つまりハヤテは主人公降格。
まぁ当然だろう。
長ドスのような刀を振り回す姐さんロサ(左)に、
キムの名が示す通り、あのキム家の子孫キム・スイル(右)。
他のやるせないほど濃ゆい面々とはうって変わったクールでスタイリッシュなこの二人。
普通の感覚を持ったプレイヤーなら躊躇なくこの二人でタッグを組むだろう。
ロサは今作唯一の女性キャラであり、
つまり前作のキャロルを消滅させての登場となっている。
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やはりアップが悪魔的だったのが悪かったのか、
キャロルは消えてしまった。
だがロサはその分なんとキャロルが果たせなかった使命!
脱衣KOを見せてくれるのだ!
さすが荒廃してるだけのことはあるぜ! 未来! |
キャロルも脱いでさえいれば消されなかったかもしれないのに……
どうやらキャロルは
仕事ではキスはしないタイプの女優だったようだ。
大物気取りか。
スイルは餓狼との掛け橋がじいさんだけでは弱かろう。
というか何か間違っている、間違っていたのでは
ないか?
という反省から生まれたキャラなのか、キム・カッファンの子孫である。
伝統の鳳凰脚時に炎が上がるため、
ジェイフン経由の子孫というのが一般的な見方だ。
餓狼3でキムを外した際に韓国から抗議が殺到したらしく、アジアのキム人気は絶大。
まさしくアジアのために生み出されたアジアのための新キム家だろう。
しかしこのスイルに正義の血は薄いようで、
むしろワルっぽい、無口でハードボイルドなキャラクターとなっている。
はっきり言って、カッコ良い。
ターゲットを絞りつつも狙い過ぎない、ユーザーに媚びないデザインには脱帽だ。
餓狼SPタイプで連続技専用といった感じではない今作の逆転技(超必殺技)だが、
コンビネーションから鳳凰脚を繋いだ時の快感はキム家最強と言っても良いだろう。
この二人の渋さ、濃さ、センスの良さは
風雲というマイナーなゲームのキャラでありながらカルトな人気を誇り、
未だKOFやカプエスに彼らを! との声もあるほどだ。
新キャラだけがこんなにカッコ良いと浮いてしまいそうだが、
プレイしているとむしろ
他のイロモノ共が浮いているので安心だ。
何か
ヒーローを使って怪人を倒しているような感覚に陥る。(怪奇ブーメラン男等)
安易なパクリや同人狙いではない、
昔ながらのファンが愛する本物の“カッコ良いSNKキャラ”が、このロサとスイルなのだ。