考察 ヘビィ・D!に何があったのか?
KOF'97に登場したニューフェイスチーム。
彼らはニューフェイスなだけあってKOFの招待状を持っておらず、
さらに出場を思い立った時にはすでに一般部門の予選大会も終了済みだった。
そこで彼らがKOF出場のために取った行動とは……
アメリカ某所。レンガ壁の袋小路で対面している社と男。
闘い始めてしばらく経っているらしいが、
平然としている社とは対照的に男の方は片ひざをついている。
そこにやって来るシェルミーとクリス。お互いに向かい合って壁に寄っかかる。
クリス 「うまくいった?」
シェルミー 「まあね、結構いかつい男だったけど。
でも、シードチームあおって果たし合いなんて……、ここまで凝る?フツー?」
クリス 「どうしてもって言って聞かないんだもん、しょうがないでしょ」
シェルミー 「信じらんない」
クリス 「とか言ってえ、結構楽しんでんじゃないの?シェルミーだってさ?」
シェルミー 「分かったような口きくじゃない……そろそろね」
やっとのことで立ち上がる男。涼しい目で声をかける社。
社 「もういいだろう、三つ数えてやる。おとなしく招待状おいてけ」
男 「……ふざけんな……」
社 「ひとーつ」
お互いを見て『クスッ』と笑うシェルミーとクリス。
社 「ふたーつ」
組んでいた両手をだらりと下ろし、さらに涼やかな視線を男に送る社。
男が表情を厳しくさせる。
男 『攻めてこい。こっちにはまだとっておきがあるんだ』
社 「みっつ!」
駆け出そうとする社を確認して必殺技のモーションに入る男。
男 「かかったな!ヘルバウッ……なっ!」
数メートルあった距離をいつのまにか縮め、男の目前まで詰め寄っている社。
『ニヤリ』とした表情が飛び込んできたかと思うと、視界が急に浮き上がって回転する。
腕一本で男を軽々と持ち上げている社。
社 「こんな腕でよくも出場するなんてぶちあげたもんだ。
これまで勝ってこれたのは名前通り『幸運』だったからかもな」
男 「貴様は……一体!?」
社 「七枷式真館空手・七枷社。
今大会もその強さを証明するのは草薙でもボガードでも極限流でもない。
七枷社、この俺だ」
男 「七枷……社……!」
放り上げられる男。起き上がる素振りも見せない。
地面に落ちている招待状を拾い、シェルミー達の方に振り返る。
社 「いつ来た?」
シェルミー 「ちょっと前にね。けど、やるって言ったらとことんね、あきれちゃう」
社 「まあな」
シェルミー 「でも、どうしてアメリカなの?日本でも良かったんじゃないの?」
社 「どうせ奴を叩くんなら別の地区から決勝大会でと思ってな。
それ位のアピールはあってもいいだろう?
ここのブロックを選んだのは、たまたま手頃な奴らがここにいた、
それだけのことだ。ところで、お前らの方は?」
各々の招待状をヒラヒラとちらつかせる二人。
クリス 「これで三枚そろったね」 |
――オフィシャルストーリーから抜粋
と、このようにつまり招待状を強奪したわけである。
その相手は明確には記されていないが、
アメリカ、
幸運、そして
「ヘルバウッ……なっ!」等のキーワードから見るに、
アメスポチーム、
ラッキー・グローバーその人であろう。
←左の人
そしてさらにクリスとシェルミーも招待状を奪っている事実、
シェルミーの「いかつい男」発言から見て、
同様にブライアン・バトラー(右)、ヘビィ・D!(中)もボコボコにされているはずである。
だが、ここである人物の不思議な姿が目撃された。
招待状を奪われて大怪我を負い、KOF'97に出場出来なかったはずのヘビィ・D!が、
KOF'97より
トゥードゥーの横で踊っているではないか。
これは何か? ピンピンしているではないか。彼は本当に招待状を奪われたのか?
奪われたのならなぜこんなに陽気に踊っているのか?
悔しくないのか? プライドはないのか? その感嘆符には何か意味があるのか?
彼の行動、そして空白の時間は謎だらけである。
そんなアメスポチームの隠蔽された惨劇だが、
実は続編の'98で彼らが復活した際、ラッキーがこの件についてコメントしてくれている。
それで謎が解けるのか否か、彼の言葉を聴いてみよう。
★ファンへ一言★
なんか噂じゃ、去年どこぞのチームに招待状奪われて
出られなかったみたいな話になってるようだけどよ、ありゃデマだ。
俺たち出てんだぜ、KOFによ!!試合はTVで放送されなかったけどな……
だが、今年はバッチリ、オレの闘いを見せてやるぜ!!
ま、がんばるからよ、応援よろしくな! |
嘘つくな。
表舞台でオープンに行われているはずの'97でTV放送がされていないとは、
何か試合中に放送出来ないようなモノでも出したのだろうか?
いやジョー・東が放送出来ているにも関わらずアメスポが放送されないことはないだろう。
仮にも招待状を送られたシードチームである。放送されていないはずがない。
ラッキーのこの発言をじっくり読んでいるとどこか
悲壮感すら漂ってくる。
これが現実。
招待状を奪われたことを神楽ちづるが切り盛りする運営本部に伝えてはどうだったのか?
いやそれを恥と感じる意地が彼らにもあるだろう。
シェルミーの「果たし合い」という口振りからするに、
初めから招待状を賭けての闘いだった可能性もある。
この強奪事件が行われたのは予選大会も終了した、まさにKOFが開かれる直前。
アメスポチームがゼロから這い上がることは不可能であるし、
それ以上に、直前の襲撃だけに闘える身体ではないはずだ。
だが踊っている。
本当にヘビィ・D!はどうなってしまったのか?
好物が雪●の毎日骨太だけに食中毒にでもなってしまったのだろうか?
そうかも知れない。
そうかも知れないがそれだけではこの
アホな行動の理由にはならないだろう。
いつの間にか許容しているが、
トゥードゥーの横でアメリカの扇子を振って踊るなど、
よほどのアホにしか出来ない行為だ。
ではヘビィ・D!はなぜこのアホの子のような行いをしているのか?
そこには悲しい現実があったのだ。
結論 パンチドランカーになっていた
そう、ヘビィ・D!はあのベネズエラの戦慄、カーロス・リベラのように、
ボクサーの過酷な職業病、パンチドランカーとなっていたのだ。
思えばD!は94年のKOFデビュー時ですでに、
「
ヤッパッパー!(ブラストアッパー!)」や「
のーしぇ!(器を知れ!)」等、
一般人には聞き取れない音を度々発していた。
言語障害が現れるまでに彼の病状は深刻だったのだ。
その為、'95の出場を辞退し、背景で酒を浴びていた彼だったが、
'97で起こる、悪夢の招待状強奪事件。
もう闘えない彼をクリスか、あるいはシェルミーが一方的に撲打。
それによってD!のパンチドランカー症状は一気に進んでしまい、
その結果がトゥードゥーの横で陽気に踊るあの姿となってしまったのだ。
なんということだろうか。
オロチ編が完結した'97で、また一人の漢の物語も完結していたのだ。
一見華々しいKOFの裏で起こっていた悲劇。
これがボクシングの試合で対戦相手を死に至らしめてしまった業なのか。
あまりにも残酷な闘いに魅入られた漢の結末。
'98での復活をただのドリームマッチと見るのか、感動のヘビィ・D!復活劇と見るのか。
ここには答えを出さないでおこう。
いずれにしてもそこには格闘という戦場を駆けた一匹の獣の、猛々しき人生があったのだから……
ヘビィ・D!の伝説は…… 永遠に消えない……
ヤッパッパー!!