1996 378M 
復活の時、来たる。
真サムでピークを迎え、アニメ化、RPG化と様々なジャンルを飲み込んだサムスピ。
しかしそのRPGは度重なる発売延期によって白けムードを作り出し、
ついには斬サムという悪鬼羅刹なゲームを発売してしまったおかげで
めっきりカリスマを失ってしまいました。RPGは発売後にさらにカリスマを失わせました。

そのサムライスピリッツの2Dでの(旧SNK純正、ネオポケも除外)最終作が、
この天草降臨となっています。
今回はさすがに懲りたのかきちんと作りこまれており、完成度が高いです。

終わってみれば2Dサムスピは前期と後期に分けられる形になりました。
斬りと蹴りに弱中強の威力差があり、強攻撃はボタン同時押しだった初代、真。
斬りのみに弱中強があり、蹴りは1ボタン、レバー方向で変化となっている斬、天。
操作形態だけでも大きな差があります。

今作は後期作品ということで斬サムをベースにしていますが、
どこか根本的な部分で動きが重たかった斬サムとは違い、
プレイ感覚はむしろ前期に戻った印象です。正常化と言ったところでしょうか。

システム関連も、ゲーム性を壊していた空中ガードの廃止、
万能だった見切り(攻撃避け)の弱体化、各種ハメ技の撤去。
さらに修羅、羅刹の性能の違いを大きく明確に。
そして発狂せんばかりだった攻撃力は、
これは大斬りの一撃感が減って嫌だったりするのですが、
体力ゲージを二本にすることでカバーしました。

自分で怒る謎の怒りゲージ溜めは怒り爆発システムとなり、
怒りゲージそのものを爆発させて消滅させてしまう代わりに
強力な連続技を作れる連ね斬りと、ゲージ一本は奪う一閃が使えるようになります。
怒りゲージ消滅とは文字通りの“消滅”で、ラウンドが変わっても復活はしませんが、
技を喰らっている最中にも無理やり発動可能で、連続技脱出にも使えました。
まさに攻守にギリギリの奥義というわけです。

そしてもうひとつの目玉システムが連続斬り14連斬です。
これは発動技を当てた後に決まった順番でボタンを押していくと
ザックリザックリ連続で相手を斬れるというシステムで、
これにより連続技の乏しい侍魂界でも連続で斬る快感を得られるようになりました。
もっとも、サムスピに連続技などいらぬと言ってしまえばそれまでですが、
14連斬を途中でキャンセルして武器飛ばし等が常套手段となったのです。

さらに、この14連斬の特典はそれだけに留まらず、
なぜか斬りつけたほうが怒りMAXになるという謎の逆ギレシステムでもありました。
意味が解りません。ただの逆ギレなのか。斬りすぎて興奮してしまうのか。

こういうことなのか

そろそろナコファンにジャンプ大斬り>アンヌムツベを喰らわないか心配です。

と、一見綺麗にまとまっている感じの天草降臨ですが、
その中にコッソリ狂気を感じさせるシステムが搭載されていたりします。
断末奥義自決です。

断末奥義は端的に言えば究極神拳で、
倒した相手がフラフラと立っていることがあるのでその時にコマンド入力。
俗に言うFINISH HIM!!
実写の猛者達が腕もいだり心臓引っ張り出したりする、非常に肉食な状態です。

当然ここで断末コマンドを入れると相手はスプラッタになります。
よく3D版が批判されますが、実写にならなかっただけ幸いだったのではないでしょうか。
一歩間違えば大江戸ファイトですし。

ちなみにコレはナコルルとリムルルには決められません。
もし分断出来たならばキモイくらいにナコリム狂いの漢達が泡を吹いて卒倒し、
ゲーセンの店員さんが困ってしまうからでしょう。
SNKは現場への配慮も忘れませんでした。(※零SP忘れました

そしてもうひとつが名前だけですでに不穏な空気を感じる自決
これは侍らしく負けるくらいなら自分で腹を割るというシステムで、
コマンドを入れるといつでも死ねました。
一本目で自決すると二本目開始時は初めから怒りMAXという特典もあり、
斬られて死ぬくらいなら自ら死を選ぶのが賢い漢の選択となります。
決してキャプテン・サワダのように
「ハラキリ!」と叫びながら
鮮血で攻撃するようなシステムではありません
血で飛び道具を跳ね返したりもしません
本当に実写にならなくて良かった……

また話題沸騰の上級者向け剣聖モードは常時怒りMAXがなくなり、
ほとんどもうただガード不能なだけというモードになりました。

それはもう初級上級とかそういう話ではないだろ!


等々バリエーション豊かな天サムですが、
CPU戦がタイムアタックになっているのがどうにも頂けません。
サムスピは他のSNK格闘と違って“静”の魅力に満ちたゲームなのです。
それを急いでクリアをステータスにしようなどとは愚の骨頂です。

別にタイムを狙わなければ問題なさそうですが、
実は一定時間内にクリアしなければエンディングがないのです。
回転率を上げようという大人の事情が見え隠れし、とても残念でした。

A-toshi画伯

今やったらちょっとハマってしまったのでお気に入り度UP。
サムスピとしては初代、近代格ゲーとしては天サム、といった感じで。

以後サムスピの新作は全てポリゴンで発売されますが
多くのユーザーは納得がいかず、もう一度2Dでサムスピを……
という声が後を絶ちませんでした。
しかしそれも延々と届かず、SNKを遠くに感じ出した切ない時期でもありました。
(※2003年、2Dとして7年振りに復活、その名もサムライスピリッツ零

空耳スピリッツ 空耳降臨

▼パヤック八百長!

骸羅によると武力のパヤック・シピタックは八百長らしい。
「奈落へ落ちろ」 ノアだけはガチ。

▼コーハンくらいのデブめが……!

チャンを引き合いに出し、敗者を罵る天草のボイス。
頂いた情報を総合するとどうも「分を弁えぬ木偶めが……!」と言っているようだ。

▼汝に死嘩護……(天麟の書)

もう天草は何言ってるのか全然解らん

PICKUP侍
覇王丸
名台詞
(初代OP)
武士道トハ 死ヌコトト見ツケタリ
修羅道トハ 倒スコトト見ツケタリ
我、悪鬼羅刹トナリテ
目ノ前ノ敵スベテヲ…… 斬ル!

別に天サムの、というわけではないのだが、
最後なので主人公覇王丸。いや、主人公と言えるのか?
彼の目的はあくまで強者と斬り合って自分の剣を高めることであって、
魔物を斬るぜぇ! そして平和を守るぜぇ!
などと特別自分からストーリーに乗り込んで行くキャラではない。
ただの諸国漫遊武者修行である。

それにより、彼をストーリーの中核に置くのは非常に難しかったようで、
真では何やら紅珠魂とかいう特殊な魂を持っているとかいうことに突然なり、
魔に狙われ、ポリサムではさらに半陽の男とかいうのになっていて、
何でも半陰の女、色と交わることでどうたらこうたらでまた狙われるとか、
そんな常に巻き込まれ型の主人公ライフを送らされることになった。
『血生臭い生きざまに 凶事まとうは 偶然ではなかった』
というナレーションが全てを物語っていると言えるだろう。

真の『覇王丸地獄変』というサブタイトルは彼を中心にドラマが展開される、
という意味合いで付けられたらしいが、
結果、全然そんなことはなかったのは前にも述べた通り。
世界を救ったのはナコルルの命(実は死んでなかったらしいが)で、
悲劇のヒーローとなったのは彼女に好意を寄せるガルフォード。
主人公、なぁーんもしとらん。
後に羅将神ミヅキを倒したのは公式で覇王丸ということが判明

斬、天、ポリ2ではもはや閑丸、風間兄弟、アスラが主人公である、
と断言しても良いほどに外野に回され、もう覇王丸でストーリーを作るのは無理!
というSNKの魂の叫びが聞こえた。

しかし、それでも空前絶後のバッサリ感、
日本一名前の有名な通常技、恐怖の大斬り、斬鉄閃で印象付けた
サムライスピリッツというある種の奇跡の象徴として、彼の輝きが失われることはない。
そう、覇王丸は“主人公”であると同時に、
いやそれ以上に、サムスピの“象徴”なのである!



という、綺麗な〆でどうでしょう……?

olino画伯