病院へ移り、治療が済んだ後、メディアはすっかり元気になっていた。
そしてタンも意識を取り戻し、長い長い今作の設定を語り始めたのだ。
さすがは原作者付きのコミカライズということで、
地理関係の設定までリアリティがあり、非常に凝っているのだが、
漫画として読むにはあまりにも長いので箇条書きにしよう。
・メディアはバイヤーだった亡き両親から臓器売買に関わるディスクを受け取っており、それ故狙われている。
・ゲートと港で、陸路、海路とそれぞれ一つずつしかないサウスタウンは臓器搬入に都合が良い。
・タンの勢力がゲート沿いに家を構えているので邪魔。
・KOFで賭博に来るBig Ballerを豪華客船に乗せ、本命の闇売買を行っていた。
・仮面の男は恐らくギースの部下、スラッシュ。
粗方の話が終わった所で、いつかの小汚い男が見舞いに現れた。
入りづらい? あまりにも小汚いからだろうか?
男は「マイヤ」と呼ばれていた。
あ、
このおっさん、リチャードだったのか!
言われてみれば確かにリチャード・マイヤである!
どういうわけか名を呼ばれるまで私には全く解らなかった。
あまりにも小汚いその姿が飲食店店長としての彼とかけ離れていたからだろうか?
ギリシャっぽいからだろうか? 本当に全く気付かなかったのである。ヒゲが汚いからだろうか?
リチャードを加えてさらに情報を整理し、一同の推測は核心に迫って行く。
何とか対策を練り上げて市民で立ち上がらなければならない。
そこで突然、リチャードが人相を歪めた。
何を血迷ったのか彼は、
手榴弾を投げおったのである。
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「FUCKIN!」 |
咄嗟に窓の外へ手榴弾を放り投げ、激怒するテリー。
また老けた。テリーは怒りが深まれば深まるほどに老ける。
いつの間にか外へ逃げ出していたリチャードが窓のテリーへと挑発する。
MEYER! FUCKING FUCKIN…… FUCKING!!
ファ――――ックッ! サノバビッ――――チッ!
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「あんのヤロー!! ぶっコロしたる!!」 |
今のテリーは本当に人を殺しそうだ。リチャードはとんでもない男を怒らせてしまった。
車でチキンレースを仕掛けたリチャードをメディアの車で追う。
当然、再び盗難車ではあるが今はそれどころではない。あのファック野郎をブッ殺スのだ。
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「HAHAHAHA……!!」 |
しかしリチャードは行き止まりを前にしてもブレーキを踏むことなく、笑いながら爆発炎上したのだった。
衝撃の
リチャード・マイヤ死亡シーンである。
「う〜ん…… やっぱりマイヤでは役不足でしたね〜〜!」
そこに聴こえて来た、およそ似つかわしくない落ち着いた声。
慇懃な物腰ではあるが、この場においてはそれが逆に男の異常性を物語っている。
テリーが振り返ると、件の仮面の男の姿があった。
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「おまえが「仮面の男」か」 |
しかし、仮面の下の素顔は予想された“スラッシュ”ではなく……
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「おやおや…… ごあいさつですねー
でもこの顔ならご存知ですよね……」 |
ファ――――ック! ギ、ギース!
ブラックマーケットを手引きしていたのはやはりギースだった!
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「私は死にませんよ……
この街が私を必要としているかぎりは」 |
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「そーか! ならば…… 今度こそ責任をもって地獄に送ってやろう!」 |
まるで紳士のようなギースと安いチンピラのようなテリーの対峙。
再び宿命の闘いが始まる……かと、思われたが、
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「まぁまぁ落ちついて……」 |
彼は妙に弱気だった。
確かに今作のテリーはややもすると落ち着きがなく、
FUCKIN! FUCKIN! と取り乱しがちだが、
それにしてもこの野性味のない穏やかなギース様は何事だろうか?
思うにこれは、後にムキムキの上半身をさらして闘うギース様以前、
そう、餓狼1の主にデモシーンではこのようなイメージをプレイヤーにも作者にも、
実際、与えていたのではなかろうか? 私も身に覚えがある。
餓狼1デモのスーツギースがそのまま出て来たのなら、このようなギース像もさほどの違和感はない。
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「特にあなたに会いたがっている人もおりますし……
まぁ会ってやってください」 |
紳士を装いながらも悪巧みが大好きなギース様が呼び出したのはライデンだった。
そしてまたテリーは当然のように
メディアそっちのけで格闘を始めたのだった。
もう何度目になるのか、放置されたメディアに迫るギース様。
それはまぁ、ギースの目的はメディアなのだから、目の前で放置されていたら手を出すだろう。
どうやらテリーにとってこの女は
割とどうでも良い存在のようだ。
己の闘争本能を満たすことの方がよほど大事なのである。まさに餓狼、本物の狼だ。
そこにズタ袋と共に現れたのは、
描写はないが恐らくまたタンからの手紙を受け取っていたのだろう、
パンツルックの東洋人、そう、ジョー・東その人だった。
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「オレもまぜてくれよ!」 |
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愛しのテリーには(また)放置されたうえ、
何か普通にパンツ一枚の人が出て来てひどく不安そうなメディア。
それはそうだろう。
いくら今、サウスタウンの治安が乱れているとはいえ、
昼間からパンツ一枚でウロウロする男は基本的に普通ではない。
当然、夜でも普通ではない。
女性ならまず身の危険を考えても何ら不思議ではないのだ。
この女の子は本当にかわいそうだ。 |
両親は殺され、組織には狙われ、現保護者のタンはクスリ漬けにされ、拷問を受け、
慕う男には幾度も放置され、今またパンツ一枚の男に迫られている。
少女は一体どこまでの不幸を背負えば良いのか。
それでも彼女が健気で明るいのは、彼女もまた度々車を盗むアバズレだからであろう。
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「ならばお相手いたしましょう
ルールはコンテストですか? それとも……」 |
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「決まってるだろ 俺たちのルールは……
STREET FIGHTING!!」 |
サウスタウンベイにて、テリーvsライデン ジョーvsギースの
STREET FIGHT が始まった。
テリーの
BURN-KNUCKLE!! ジョーの
SLASH KICK! がそれぞれ炸裂する。
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「立てよギース……
そしてその変なアーマーを脱ぐんだな」 |
裸になれと。自分と同じようになれとジョーは言っている。
しかし、
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「アーマー……!?
この服は脱げますけどねェ ほかは無理ですよ
なにせこれが私の新しい身体ですから……」 |
不敵に笑うギースは機械に包まれた右手を突き出した。
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「くらえ必殺テリー・ラリアット!!」 |
一方のテリーは試合を優位に進めていた。
しかし、プロレスラーのタフさの前では
BURN KNUCKLE とてダメージはないという。
いくら打っても決定打にはならない。弾き返してやる。ライデンは余裕を浮かべて言った。
「なんだと…… いってくれるじゃねーか…… だったらコレを受けてみやがれ!!」
FZZZZZ!!!
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「HYPER BURN・KNUCKLE!!」 |
PWHOOMM!
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「YEHAAR!!」 |
次々放たれる捏造必殺技の前にさしものライデンも沈むのだった。
メディアも大喜びである。
だが、一方のジョーサイドは苦戦していた。
何と、服を脱ぎ捨てたギースの裸身はメカに包まれており、
つまるところこの姿こそがかの有名なあのLEO ADVER餓狼最大のIMPACT!
メカ・ギースだったのである。
紳士なギースにはさほど違和感もないと書いた私だが、さすがに
メカには違和感がある。
ますますアメコミ度が増して行く中、応援するテリー達の脇にゾンビが降り立った。
以前にも増してリチャードに見えなくなったリチャード・マイヤである。
メインキャラでこそないものの、テリー達の拠点、PAOPAOカフェのマスターとして
様々なメディアミックスに登場する彼だが、
ここまで悲惨な目に遭ったことはないだろう。
実は彼は腎臓の悪い娘、アンリのためにギースの手先と成り果てていたのだった。
最後の力でフロッピーディスクを託し、今度こそリチャードはその生涯を閉じた。
つい一時間ほど前はとんだFUCKIN野郎だったリチャードだが、
彼への怒りはもはやギースへと向かう。
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「TIGER・KICK SPECIAL!!」 |
その一方で、
相手がメカであっても動じることなく、
KRAA! と闘い続けるジョー・東。
捏造必殺技までも繰り出し、彼はついに
メカと互角に闘っていた。
抵抗するFuckin' Japのイエローモンキー野郎に手こずるメカ・ギース。しかし……
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「THIS IS SMALL……? PRESENT FOR YOU!」 |
AAAAAA!
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
ロケットパンチがお腹に刺さって抜けなくなった――――っ!?
(内臓がはみ出るから)抜くなー!! と絶叫するテリー。
大変なことになってしまった。
ギースの腕からロケットパンチが出るだけでも驚きなのに、それがまさか
お腹に刺さるとは。
何という恐ろしい力だ、メカ・ギース。彼はもはや兵器である。
卑怯だとギースをなじるテリーだが、やはりそれ以前に、生身でメカと闘うのは間違っていたのだ。
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「それよりもこのままだったらジョーさん死んじゃいますよ」 |
その通りである。
何しろお腹にあんなに太いロケットパンチが刺さっているのだ。
早く手術して貰って抜かなくては。
なぜか余裕の笑みで彼らを見送るギースを尻目に、
テリーはお腹にロケットパンチが刺さったままのジョーを抱えて、病院へ走るのだった。
本当にジョーは大丈夫なのか!?